“建設業界とコンプライアンス”というと、まず浮かんでくるのが耐震偽装事件ではないでしょうか。2005年のことでした。
コンプライアンスが企業にとって重要なことは言うまでもありません。もちろん、倉庫などの物流施設にも言えます。大切な荷物を保管し、倉庫内では、流通加工や仕分け作業で多くの人が働いています。もし、耐震偽装などがあって、倉庫が崩壊したら大惨事となります。
しかし、ある意味「物流施設」とは、大変難しい「謎の建物」と言うこともできます。同じ建物でも、マンションという建設用途については、参考となる膨大な資料があります。コンプライアンスという課題に絞っても多くあるのです。「物流施設」「倉庫」の資料はほとんど見当たりません。資料があったとしても、その中で実用に耐えうるものは皆無です。
物流施設の資料がないのも仕方がない面があります。物を保管する以上、セキュリティや効率的に扱うノウハウを守るためには、オープンにしないことは当然なことです。銀行の金庫室を一般公開しない理由と同じことです。
ただし、ここであきらめていては、いくらしっかりとした物流施設を作っても、信頼性が揺らぎます。
個人的な見解になりますが、「コンプライアンス」とは「知識」ではなく「倫理」の問題であると思います。法令の知識を詰め込んで、使いこなすことがコンプライアンスだと思っている人が多いようですが、それは大きな間違いです。法令とは、社会人が最低限守るべきものです。それがいつの間にか、法令=最高の基準という考えに変わっていってしまったようです。法令ぎりぎりで建物を作ること(極限設計)を考えていて、一歩踏み外してしまった結果が、上記偽装事件の根源であろうと考えています。
そう考えれば、建築計画的に閉鎖的な物流施設ですが、正しい調査手順を心得ていれば、建築法規的に必要な情報は用意に得ることが可能です。
弊社では、社内向けの調査マニュアルを作成し、運用しておりますが、新人でも、必要な土地情報や法令を押さえることができる内容になっております。倉庫・物流施設を計画する上で、まず、法令違反にならないような正確な情報を入手することが必要不可欠となります。
たとえば、用途地域です。営業倉庫なら、準住居地域以上でなければ建設することはできません。さらに、日影制限、建ぺい率、容積率といった情報を盛り込みます。耐火要求も重要な事項となります。ここまでは、どの地域でも必要な情報です。
さらに行政ごとに、条例・指導要綱等があります。同じ関東でも、東京都、横浜市、川崎市では、条例がまったく異なってきます。
このように複雑に絡み合った法規制と計画的な資料も皆無に等しい倉庫、物流施設の「コンプライアンス」をうまく考えるためには、「コンプライアンス」とは、「倫理」の問題であると捉えることが何より肝心であると思われます。
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著者プロフィール
平澤 賢一 (ひらさわ けんいち)
株式会社イーソーコ総合研究所
エンジニアリング部 部長
一級建築士 日本建築学会会員
株式会社DO総合設計事務所入社。その後、日航建設株式会社( 現「JAL建設㈱」) 設計部、株式会社実工設計設計部・チーフを経て、2006年株式会社イーソーコ総合研究所に入社


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