物流不動産ニュース

物流、物流不動産、倉庫を網羅した
最新ニュース・情報を発信しています。

  • メール会員情報変更
  • メールマガジンバックナンバー
  • ニュースメール配信登録

渋滞が事業者圧迫▼東京港の海コン輸送 荷待ちで効率低下 

2014年04月02日

輸送経済

 京浜港が国際コンテナ戦略港湾に選定されて4年。東京港のコンテナ取扱数は増加している。一方で、荷待ちコンテナが原因で起きる港湾周辺道路での車の渋滞など、港が抱える問題も少なくない。2月には東京都港湾局が「東京港総合渋滞対策」を発表し、海上コンテナトレーラーの待機場整備や、コンテナターミナルの新設など渋滞解消策を打ち出した。
 東京港の周辺道路で起きているコンテナ車両の渋滞が、輸送効率を下げ、円滑なコンテナ輸送事業の妨げになっている。関東の海コン事業者は問題を広く世間に訴え掛けようと、昨年10月からドライバーの拘束時間原則「13時間、最大16時間」の労働時間を順守し、アピールしてきた。「まだ一般的な認識は低いが少しずつ反応は出てきている」(東京都トラック協会)という。
 コンテナ車両の渋滞改善には何が必要なのか。2月に東京都港湾局が発表した「東京港総合渋滞対策」では、(1)新たなコンテナターミナル整備や既存ふ頭の再編などコンテナ処理能力の向上(2)臨港道路南北線や東京港トンネルなど道路交通網の整備(3)従来より1時間早い、午前7時半からゲートを開ける早朝ゲートオープンやコンテナ車両待機場の整備、違法駐車対策など即効性のある取り組み――を掲げている。
 「渋滞で物流が滞り、環境へも影響が出ている。対策は重要」と東京都。まずは27年度末~28年度初めまでに大井ふ頭に、新しく埋立地をつくりバン・シャーシ置き場を移転。従来の置き場はコンテナ車両の待機場として整備する。

待機所整備は根本解決にならず

 しかし、ある海コン事業者は「本来は海コン輸送車両の〝待機時間〟の問題。待機場などはもちろん整備してほしいが、根本的な解決にはならない」という。
 海コン輸送車両は前日の夜にコンテナターミナルから引き取った荷物を次の日の早朝配達。昼頃空きコンテナを返却し夕方また翌日分の荷物を引き取る。それに対し、コンテナターミナルの受付時間は基本は午前8時半~午後4時半。それまでにゲートに並ばなければ荷物を引き取れないため、受け付け終了の4時半前後に車が集中。ドライバーが車庫に戻るのが深夜になることもあるという。
 「昔は頑張れば3本は運べた。いまは平均1本半」(前出の海コン事業者)。道路の渋滞による回転率低下に加え、輸送単価も下落。「中小の事業者では撤退しているところもある」(同)。
 「単価が下がるのは仕方がない。回転率が上がればその分努力できる」という海コン事業者の声も。荷量に合った柔軟なゲートオープンが実現すれば、「車両1台が、もう1、2件仕事をこなせる」(同)。

「一体誰が運ぶのか」 国は荷物集積図るが

 さらに問題を複雑にしているのが、さまざまな立場の事業者がいること。「他県から来ている事業者などもいて、物流事業者だけでもまとまり切れていない」(同)。中にはコンテナ部分だけ切り離し、違法駐車して違う仕事に向う悪質な事業者もいるという。他にも港湾作業を取り仕切る港湾事業者、荷主、物流事業者と荷主の間で円滑な輸送を手配するフォワーダー(利用運送事業者)など数多くの事業者が関わっている。
 フォワーダーも事態を重視。国際フレイトフォワーダーズ協会(=JIFFA)は「コストと時間が1番の問題」とする。渋滞を見越して、車の拘束時間を長めに設定しなければならず、荷物手配の効率は悪くなる。さらに「近くに降ろす荷物は運賃が安く、回転率を上げる必要があるため余計にドライバーが嫌がる」(JIFFA)。
 実際に荷物を運ぶドライバーも、「稼げる仕事だとは思わない」。渋滞についても諦めムード。前出の海コン事業者も、「若いドライバーが皆辞めてしまう。ダンプや建設作業員など、賃金のいい仕事に回っている」という。

港湾の利便性向上が不可欠

 国土交通省は東京港へさらに荷物を集めようとしている。ことし1月に発表した、国際コンテナ戦略港湾推進のための施策にも、「寄港を維持するためにはより広く荷物を集める必要がある」とある。
 しかし、「誰が運ぶんだろう」と別のドライバー。「一時的に渋滞が減っても荷物が増えたら別。待機場ができても荷待ちの時間が変わるわけではない」とも。
 国交省は今後、連携の取れていない各ターミナルのオペレーションシステムの統一や、柔軟なゲートオープン時間の実現など、積極的に取り組む方針。都港湾局も、「いろいろな事業者に魅力ある港と思ってもらえるよう、バランスを取って運営できれば」と話す。一方、現場のドライバーから聞こえてくるのは、「待ち時間ばかり」の声。港湾の利便性向上が求められている。(佐藤 周)