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人づくりは社会づくり その2「訓練は易し、実践は難し」 - 124 

角田20151020_01

東日本大震災(平成23年3月11日発生)よりこのかた「想定外に備える」ことは今や危機管理の常識となっているが、古来「言うは易し、行うは難し」というように、その実践に向けた意識改革はなかなか進んでいないようである。

例えば防災訓練。筆者の地元を取り上げるまでもなく、全国の自治体で行わないところはないと思われるが、訓練は「やりさえすればいい」と言うものではなく、その内容についての有効性が問われる。

先刻、地元で防災についての勉強会があり、講師として市職員を招いたが、その内容は既存の防災ガイドブックを読み上げるだけのもので、台風18号に伴う河川の氾濫被害が記憶に新しい中で、参加者の興味・関心を引き出すことは難しく感じられた。

もちろん、その内容は予め計画されていたものであろうし、物事を計画通りに進めることの意義については論を挨たない。しかし、想定外の事態を前提とした訓練はその例外であり、マンネリこそが危機管理における最大の敵と言える。

去年はこうだったから、今年もこれでいいだろう。百年、千年に一度の災害に備えるなんて予算の無駄、馬鹿馬鹿しい。

……かくして「ムダ」なものとして「仕分け」られてきた諸々の事業が、やっぱり必要なものだったと評価されるのは、往々にして手痛い代償を支払わされた後なのである。

それでも「後悔先に立たず」の通り、有事について新たな事態が想定・提案されるたび、「あり得ない」として却下されてしまうのが世の常というものであり、その意識改革の難しさは、繰り返し訴える通りである。

しかし、それは裏を返せば「意識一つで他に先んずる」チャンスでもあり、先見の明とは常に新たな挑戦(無論成功を前提とする)にのみ与えられるものである。

人類の進歩は、常に想定外の中から生み出されてきた。自由な視点・発想をこそ評価出来る風土を培う努力が求められることを、改めて提唱する次第である。

角田20151020_02

 (フリーライター 角田晶生)2015.10.20