物流不動産ニュース

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既築の中小倉庫だってアメニティは必要です - 145 

物流施設におけるアメニティ設備の重要性がいわれるようになってからずいぶん経つ。端的にいえばトイレや食堂、休憩室などを整備し、オフィスも機能性や快適性を考慮、場合によっては託児施設などを設けることで施設の価値を上げようという取り組みだ。賃貸物件であれば稼働率の向上、自社物件であれば従業員の確保に効果的とされており、現に大規模高機能型物流施設では充実したアメニティ設備が売りのひとつにもなっている。

こうした取り組みは新築物件ではもはや当たり前になりつつあり、昨今では話題に上ることも少なくなった。だが築年数の経過した、それも中小規模の倉庫ではまだまだ当たり前とは言い難い。そもそもアメニティという概念が一般的になってきたのはここ10数年ほど。それ以前に建てられた事業用の建物は効率重視で、アメニティを期待するほうが無理というものだ。まして倉庫は効率が第一。建てられた当時は男女別のトイレがあって、給湯室があって、休憩室があって、というほうが珍しい時代。そんなものに金をかけるくらいなら倉庫を増床する、どうせ倉庫は3Kなんだから、という考え方が一般的だったのだろう。

もちろんアメニティ設備がないからといって倉庫として劣っているわけではない。しかし新築の倉庫に荷物を奪われ既築倉庫の空坪が顕在化しつつある今、アメニティが充実した倉庫との差が開く一方なのもまた確かなことだ。とはいえ倉庫はひじょうに頑丈な建物である。あとから水道やガスを通したくても、構造上あるいは建築法上の制約があるのだ。

だがアメニティという概念の主眼は、人々の快適性を向上させることにある。設備の増設が難しいのであれば、既存の設備を活かしたり運用でカバーしたりといった柔軟な思考が大切だ。精神論ではないが、設備が作れないのだから仕方がないというあきらめの気持ちがあっては活かせるものも活かせないのである。

まずは施設内で働く人々やトラックドライバーなど、施設を使う側の身になって考えるという習慣をつけたい。居心地のいい倉庫は、きっとオーナーにも多くをもたらしてくれるはず。そうなれば、どうせ倉庫は3Kだ、などという考え方も無くなっていくと思うのだが。

(久保純一)2016.04.20