物流不動産ニュース

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問屋街再生の現在地 - 151 

かつて流通の一端を支えた問屋街。流通形態の変化によって従来型の卸売業が縮小し、その集積地である問屋街の役割も大きく変化してきた。今では各地の問屋街で再生のための取り組みが続けられている。

問屋街再生への取り組みは、おおむね二通りに分けることができる。ひとつ目が、流通・物流拠点機能については現状にまかせ、それ以外の分野で街に新たな役割を持たせようというもの。2003年に、東京の問屋街である東神田や馬喰町、浅草橋などの空きビル・空き倉庫にアート作品を展示するイベントとしてはじまった地域活性化活動「セントラルイースト東京(CET)」は、その最初期のものだろう。中小規模の倉庫っぽい空きビルが多く眠る同エリアは、今ではリノベーションが盛んなエリアとして認知されている。地方でも類似の動きは多く、個性的なカフェが集積するエリアとして地元で有名な岡山市・問屋町(といやちょう)も、その名のとおりもとは問屋街だ。数年前から空きビルを利用した店舗が増え始め、昨今では地元主催のイベントと連動するまでになってきている。

ふたつ目が、流通・物流拠点としての機能を維持しつつニーズに合わせて変化させていこうというスタイル。問屋街としての機能はそのままに、新たな魅力を創出していこうというものだ。例えば仙台市の卸町(おろしまち)は、流通基地としてのニーズが低下し空きが増えつつあるという他の問屋街と同様の悩みを抱えていたが、問屋組合主導で空き倉庫の活用をすすめた点で他とは一線を画している。あくまで問屋街としての機能を維持しつつ、空き倉庫という現実問題に対しては音楽スタジオや演劇練習場、シェアオフィスの設置など積極的に転用をすすめている。エリア内への地下鉄開通もあり、いずれは「人が住む町」への転換も検討しているという。

前述した東京の問屋街も、先ごろ新しい「街づくりビジョン」をまとめた。これによると、組合主導で既存建物のリノベーションをすすめて起業家やクリエイターを誘致し、エリア外延部にはマンション開発を誘導していくという。建て替えの際は公共空間の整備もすすめ、商業地として魅力ある街並みを創出。屋内街路の整備やデザインルールの策定もすすめていくという。これも、問屋街としての機能を維持しつつ新しい魅力を付加しようという取り組みのひとつだろう。

中小から大規模まで、あらゆる規模の物件が低廉な賃料で豊富に眠る問屋街は、実はリノベーションの素材の宝庫。それを活かす試みは今、民間主導から公共主導へと移りつつある。リノベーションも、点から面へと発想が変わりつつある。問屋街は、すでにその先端にいるのかもしれない。

(久保純一)2016.07.05