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不動産に投資してはいけない時 - 156 

マークトゥウェインにこんな言葉がある。「10月。それは株を買うには危険な月だ。他に危険な月は、3月、8月、7月、1月、5月、4月、11月、2月、6月、9月、そして12月だ」。

要するに年中である。投資は損をする可能性が常にあるという当たり前のことを言っているジョークなのだが、思い当たる節のある方には胃のあたりが重くなってくる言葉かもしれない。

相続税が改正されてから、不動産経営を勧める広告が目につく。思い返してみると、景気の良し悪しに関わらず常にそんな広告があった気もする。バブル期には自身の土地での不動産経営、その後経済が下火になるとワンルームマンションへの投資、そして昨今はリタイア前後の壮年向けに、アパート・マンション経営を勧めるもの。相続税も気になるし、せっかくもらった退職金は減らしたくない。悠々自適の老後を過ごしたいのは誰でも同じだ。だからといって「不動産経営」というのは、ちょっと短絡的すぎないかと思う。

昨今増えてきた家賃保証による一括借り上げも、損をしない保証があるわけではない。家賃保証といいながら、家賃は数年単位で値下げされる。当然、オーナーに入ってくる収入も減る。減ったなかから建築費を返していくのだが、これも一般的な相場より割高なことが多い。業者は建築費の上乗せ分と家賃の10~15%ほどが主な収入で、そもそも建築費を負担していないのだから家賃が下がってもそれほど痛くないのだ。

さらにいえば、賃貸住宅は供給過剰の状態になってからすでに十数年を経過している。首都圏の賃貸住宅の空室率は30%をゆうに超えるというデータもある(募集をかけていない物件は空いていても「空室」ではない、と言い張る業者もいたりするが)。人口も減り続けている。にもかかわらず供給が止む気配はない。これは東京オリンピック後の家賃相場暴落を見据え、その前に少しでも足下を固めておこうという業者とオーナー双方の焦りのあらわれだろう。

そもそも不動産経営はそんなに儲からない。安定した収益を得るためには、あるいは一般企業と同等かそれ以上の経営感覚が必要だろう。不動産経営とは知識もノウハウも必要な、一種の専門業なのだ。むしろ多くのアパート・マンションが建設されている今は、買う時期ではなく手放す時期なのではないだろうか。ちょっと目端の利く投資家は、すでに手放す時期の模索をはじめている。

実は冒頭のマークトゥウェインは、大の投資好き。その腕は筆に劣らぬものだったという評価がある一方、結局は損して終わったともいわれている。彼にはこんな言葉もある。「人生には、投資してはいけない時期が2回だけある。ひとつは余裕のないとき。もうひとつは余裕のある時だ」。

であるからして、不動産に気軽に投資していい時などはないのです。

(久保純一)2016.09.05