物流不動産ニュース

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館内物流が変えるもの 

国交省が、高層ビルや商業施設など一定以上の規模を持つ建物内での物流効率化に向けたガイドライン策定に向けて動いている。

建物内における物流業務は一般に館内物流や館内搬送などと呼ばれているが、現状では入居するテナントに対し、運送会社ごとに集配を行っている場合が多い。しかしこれでは集配車は配送ごと、集荷ごとに建物に向かわなければならない。業務用のエレベーターで集配先へ向かい、荷物を届けて(あるいは受け取って)また戻る。その間配送車は荷捌き用の駐車スペースを占領している。こんなことを日に何度も繰り返していたのでは効率がよくないし、荷捌きスペースに入りきらない集配車が近隣の路上に溢れるといった事態にも陥りかねない。やはり館内の荷物を一元管理する窓口を設け、テナントへの集配を一括して執り行ったほうが効率がいい。これが昨今の館内物流の考え方だ。

建物側としては荷捌きスペースが効率的に使えてCO2の削減が期待でき、テナントサービス向上にもつながる。運送会社は集配にかかる時間が節約でき、人材不足や労働環境の改善につながる。テナントは何度も運送会社が来る煩わしさがない、といったメリットがあるが、一方で課題もある。

例えば時間帯やサイズ、物量などがイレギュラーな場合の対応をどうするか。またオフィスビルか、店舗か、集合住宅かで集配の頻度も荷物の内容も異なる。さらにテナントに届けるまでに一時保管する場所や仕分けに使用するスペースも必要になる。館内の集配スタッフや荷捌きのコストをどうするかという問題もある。館内物流を行う側はこうした様々な条件を踏まえたうえで最適なオペレーションを行わなければならないが、このような実務は建物管理会社には難しいだろう。やはり専門の業者に任せるべきだが、いずれにしてもコストやスペース整備の問題も含め、効率化のハードルは意外と高い。

さらに根本的な課題として、築年数が経過した建物は荷捌きスペースを設けていなかったり、あっても狭い場合がある。新築でも、都内の某高層ビルでは荷捌スペースの天井高が足りずトラックが入庫できないといった致命的な設計ミスがあったこともある。大規模な工事をしてまで館内物流を効率化させるべきか否か。その判断は簡単ではない。そもそも建物にとって搬入口はあくまで裏口。建物側にしてみれば、効率化だけでは割り切れない事情があるのだ。

国交省のガイドラインは平成29年度末までに策定する予定で、荷捌きスペースの効率的なレイアウトについても盛り込まれると見られている。モノの流れが変わって倉庫のカタチは大きく変わった。では物流がビルのカタチを変えるか否か。答えはもちろん「変える」だろう。もちろん外観が大きく変わることはないのだろうけれど、地下に大規模な物流施設を持った高層ビルなんて、格好いいではないですか。

久保純一 2017.04.05