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テナント出店、現場の疲弊 

特にデータがあるわけではないが、ここ最近チェーン店のテナント出店ペースに陰りが見えてきたように感じている。筆者の身の回りの話で恐縮だが、最寄りの地下鉄駅にできた商業施設はテナントがほとんど空いたままでオープンした。筆者が縁のある某地方都市に鳴り物入りでリニューアルオープンしたショッピングモールも、全フロアのおよそ三分の一が空いている。同じ都市で開発中の商業施設もオープン予定が度々延長されており、運営するデベロッパーのホームページには「入居テナント募集中」の文字が表示されたままだ。どうやら入居テナントが決まらないらしい。

集客力のない施設を安易に建てたから埋まらないのだと言われればそれまでだが、果たしてそれだけが理由だろうか。あるチェーンの喫茶店の店舗開発担当者から「出店したくても人手不足でできない」という話を聞いたのは今から数年前になる。当時の話はこうだった。

スタッフをどうにか確保してオープン → しばらく経って辞めていく → 新規従業員募集に反応なし → 社員と既存スタッフが奮闘、もしくは近隣店舗から応援スタッフを融通 → 労働条件が悪化しスタッフがさらに減る

この悪循環に陥ると、当初見込んでいた売上や利益などもはや誰も気にしなくなるのだという。ただ店を運営するために黙々とスタッフが働き、店側はそれに見合った賃金をどうにか払い続ける。そんな状況下で売上が伸びるわけがないのだ。そしてこの懸念は、基本的には現在も変わっていない。どころか従業員の確保は当時よりもさらに難しくなってきている。

店舗の出店基準は、利益がでるか否かだ。シビアだが、数字を基にした明確な判断を下すことができる。しかしいくら利益がでそうだと判断したところで、その店を回すスタッフが確保できないのであればどうしようもない。労働人口が減っている今、賃金を上げればいいという単純な話ではなくなっている。人材確保の成否は、出店の判断に大きく関与しているのである。

同じく人材不足にあえぐ物流だが、昨今倉庫業界では従業員確保のためにさまざまな施策を取り入れつつある。従業員を確保しやすい立地、通勤のための交通機関の確保、ファシリティ整備などはその一例で、実はこれ、スーパーなどの大規模小売店で行われてきた人材確保の手法でもある。しかし店舗集積型のモールに見られるような店舗テナントでは、そういった視点は伝統的に持っていなかった。そこまで気を使わなくとも人材が確保できていたからだ。テナント集積型のモールでもようやく従業員のファシリティに関心を向けているが、功を奏しているとは言い難い。景気は悪くない。魅力的なモールもどんどんできる。購買意欲も旺盛。なのに従業員が足らずにオープンできないなんて、なんだか日本の暗い行く末を暗示しているようで気が滅入る。

一方、筆者の周辺では、ドミナント戦略の結果か同じ看板のコンビニエンスストアがどんどん増えていく。よくこれだけ出店できると感心していたら、24時間営業の見直しを検討するんだそうである。

 

久保純一 2019.3.5