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フジサンケイビジネスアイ(7)物流業界の労働生産性アップの方策 

イーソーコグループ 会長 大谷 巌一

「現場で発生する物流コストは、労働生産性の低さが大きな要因だ」―。筆者は20年前から物流業界の改革を訴えてきた。同時に、装置産業型の物流業で労働生産性を高めるため、重要施策として「人財育成」を掲げ、「物流不動産ビジネス」を創始した。10年前には、徹底した実地体験による物流不動産ビジネスの各業務の理解と、物流の現場作業を肌感覚で養うことを狙いに、ジョブローテーションを始めた。労働生産性を高めるにはマルチタスクをこなす人材育成が必要であり、これが働き方改革につながっている。

ジョブローテーションを始めたのは、筆者の実体験からだ。20年以上も前のことになるが、筆者は倉庫会社の営業マンだった。受け身の物流業に攻めの不動産業の要素を取り入れ、営業成績は常にトップ。新規顧客も順調に獲得していった。半面、難度の高い受託案件が増え、結果として倉庫現場では負荷の高い業務に、事務員はルーティンワーク以外の仕事にそれぞれ追われるようになった。

時間外となる土曜日午後に貨物を預かる仕事を受注したことで、ついに現場から「大谷の案件はやらん」 と宣告されてしまった。慌てた営業部長は筆者に対し、現場の親方(責任者)に謝罪に行くよう命じた。

倉庫1階でフォークリフトを操っていた親方におずおずと歩み寄り、「度重なる現場へのご迷惑をお詫びします」と深く頭を下げた。ところが親方は、筆者が持参した大吟醸酒を振りかざし、「テメエの酒など飲めるか」と怒声を発して床に叩きつけた。筆者は居直り、「どうしたらいいのでしょうか、教えてください」と静かに返した。にらみ合いが続いた後で、親方は「現場へ入れ」と、まくしたてた。「いつから入ればいいですか」―。筆者の腹は決まった。

それ以来、日中は営業職、午後3時以降は現場入りする毎日で、休日出勤も当たり前となった。貨物ロケーションや現場能力、人間関係、雰囲気など、営業活動だけでは知り得ない現場感覚や全体像がつかめてきた。約1年後、現場から卒業できた。

現場入りしたことにより、現場に100%依存せず、お客様目線で営業ができるようになった。何よりお客様に喜んでもらえたし、現場に対してもリスペクトできるようになっていった。これこそが物流不動産ビジネスだ。物流界で働く人たちや荷主から喜ばれ、質の高い物流インフラが構築できる。

当社では物流と不動産の二刀流の業務をこなす営業マンが、現場繁忙期や協力会社で人手が足りない時にはフォークリフトの運転など庫内作業に従事する。日本生産性本部が2016年12月に発表した「日米産業別労働生産性水準比較」によると、運輸部門の労働生産性(10~12年平均)は44.3%と、米国の半分以下に過ぎない。物流業界にやれることはまだある。