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街の歴史を保存する土蔵 ―盛岡・徳清倉庫さまを訪問しました 

新緑が繁れる5月、厳しい寒さを終えた岩手県盛岡市の徳清倉庫さまを訪問しました。

 

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■徳清倉庫の歴史

徳清倉庫の歴史は寛文年間(1660年代)、初代・徳田屋清右衛門氏が酒・味噌・醤油等の醸造業を創業したことにはじまります。

3代目・佐藤半六氏の時代に酒屋として業容をのばし、現徳清倉庫中興の祖といわれています。さらに5代目・保右衛門氏の代には米の販売を開始。南部藩の御用商人(米穀世話方)として藩の発展に貢献します。1780年代に発生したいわゆる天明の大飢饉では、近隣農地を買い上げ要請を受け所有地を拡大。地域の地主として成長していきます。時代が下がって明治7年には盛岡城廃城にともなって勘定奉行所御殿座敷などの建物の払い下げを受け、これをもとに同20年、9代目・佐藤清右衛門が現「旧佐藤家邸宅」となる母屋を建設しました。

その後は所有する土地の有効活用を模索し、地域経済社会の変化に応じた不動産賃貸・林業を経営するとともに、3棟の土蔵を中心に倉庫業を営んできました。1985年に徳清倉庫株式会社流通センターとして1,730平方メートルの倉庫を新設。現在は倉庫業・不動産賃貸業・林業を経営の柱として、東北を中心に活動しています。

 

■「徳清」土蔵建物群

今回は徳清倉庫12代目当主・佐藤重昭氏に、盛岡市保存指定建築物である「徳清」土蔵建物群を案内していただきました。建物群は、前面道路の県道拡幅工事のため平成16年より全体の大改修工事が行われ、昨年春に工事を終えました。普段は一般公開されておらず、今回は特別に見せていただきました。

 

■味噌蔵をリノベーションした本社事務所

2004年、4棟あった蔵のうちの味噌蔵が本社事務所として生まれ変わりました。建物全体を約15m移動させる曳家工事を行い、さらに90度回転。痛みの大きかった構造部分を金輪継工法と呼ばれる日本の伝統工法を採用して補強しました。

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かつての味噌蔵の様子

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リノベ―ションされた徳清倉庫本社

 

 内部の壁には珪藻土を使用しパレットストーブを導入。1階は事務所と応接間があり、2階は切り妻型の屋根裏部屋のようでいてとても開放的な会議室でした。

他の土蔵群との調和が考慮された外観、そして市の保存指定建築物として盛岡の歴史を伝承するための取り組みが評価され、平成17年度盛岡市都市景観賞を受賞しました。

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本社2階は構造材がみえる解放的な空間

 

■旧佐藤家邸宅

「徳清」土蔵建物群のうち、旧邸宅は幕末から明治期の8代目・佐藤徳清氏が南部藩の勘定所に出仕していたご縁で、明治20年に盛岡城の廃城に伴い建物の払い下げを受け、城の建材の一部を資材に建築されました。

旧佐藤家

2階からの眺め

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盛岡城の二の丸御殿を再築

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最高級木材がふんだんに使用されている

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中庭を望む

勘定奉行所のあった二の丸御殿を再築し、お屋敷内の構造材は当時最高級の材料であったヒノキ、廊下などの化粧板はケヤキを使用しているそうです。見るからに立派な木材が柱や梁にふんだんに使用されており、約130年経った現在でもその風格が漂うお屋敷でした。なんと、佐藤氏はこのお屋敷を10年前まで自宅としてお住まいだったそうです。

 

■歴史を保管する倉庫

盛岡城建築当時からの建材ということは、130年より遥かに年数の経った木材を使用していることになります。現存する土蔵は3棟あり、いずれも代々受け継がれる貴重な調度品を保管している現役倉庫として使用されています。

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かつて米蔵だった現役土蔵

 

■旧酒蔵が盛岡市民の集う場所に

盛岡市内で歴史を重ねた蔵が今でも活用されている例は、徳清倉庫の他にもありました。

「もりおか町家物語館」は、岩手川酒造鉈屋町工場の建物群を市がリノベーションし、平成26年にオープンしました。酒蔵、母屋、文庫蔵などからなる地域文化の発信拠点や交流施設として利用されています。

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市指定保存建築物「浜藤の酒蔵」

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レトロな味わいのただよう内観

もりおか町屋物語館(母屋外観)

当時の面影そのままの町家

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盛岡の典型的な町屋造り。中央の常居は拭き居抜け空間になっている。

 

■蔵がアートイベントの会場に

盛岡市には、今回ご紹介した「徳清倉庫」や「もりおか町家物語」の他にも多くの歴史的建造物が残っています。こうした盛岡の歴史を感じさせる建物や街並みを、現代アートの作品発表・展示会場として活用しようという取り組みがはじまっています。「いわてART PROJECT」は、2016年に開催される「いわて希望郷国体」に合わせて開催を予定しているアートイベントです。国内外からアーティストが集まり、盛岡駅を中心とした徒歩圏内に作品を設置したりワークショップなどを行うことで国体を盛り上げるとともに、街の活性化にもつなげようという試みです。本イベントでは旧佐藤家邸宅の一部が展示会場となり、今昔の文化が融合した空間を体感できるようです。

 

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広い荷ほどき場。年に数回イベント会場として使用されている。

 

■保存と活用

盛岡に残る歴史的建造物はいずれも、歴史と景観を継承するために改修・修繕を重ねて保存に尽力してきた結果です。しかし、残すだけでは真の活用とはいえません。「今後は地域の方々の開かれた交流拠点としての活用を」という地元からの声も挙がるなか、アートイベントを機会としてさらなる活用方法の模索が続きます。

 


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