プレマネの心構え - 第5回 物流不動産Bizの人材開発
優れた人財というのは職人のような作業者でも名経営者でもない。両刀使いを指していて、管理職と担当者を兼務する者を意味している。ずば抜けて優秀な知識だけでは不足だし、一を聴いて十を知るように気配りだけの番頭さんでも困るのだ。
優れたプレイヤーであり、同時にマネジメントに長けるには心がけとそれに伴う行動が必要だ。
何よりマネジメントを優先して、「部下や同僚に喜んで働いてもらう環境」を作り出すことが求められる。一人プラス一人の合計二名で三倍以上の成果を生み出すことができるのがマネジメントの意義なのだ。
マネジメントの仕事の本質は、<心配すること>である。
・部下や同僚はきちんと予定をこなしているか
・思いがけない<まさかの事態>を予防できているか
・<万が一>の事件発生に対処する余裕があるか
・予定の業績進捗はどのようになっているか
・自らが手を出すタイミングはいつか
こんなシンパイリストを作れるようになれば一人前である。マネジメントとはリスクコントロールであり、ダメージコントロールに尽きるのだ。
作業や業務に優れた能力を持つ人財を配置して、自分の代わりにやってもらう。もし、出来ない時に初めて自分が登場するという両面の働き方を心がけることが、優れた人財と言えるのだ。先頭を駆け抜けるリーダーシップではなく、隊列の最後を見守るシェパードのようなスタイルが必要だ。
アメリカ鉄鋼王と呼ばれたアンドリュー・カーネギーは、墓標に刻んだメッセージでも有名だ。
Here lies one who knew how to get around him men who were cleverer than himself.
自分より賢き者を近づける術知りたる者、ここに眠る。
マネージャーを目指すものは、自信と自分の努力をここに向けたい。日本には便利な言葉がある。
「みんないつもありがとう、お陰さまで我々はうまくいきました」
毎日、何度も何度も使いたい言葉である。
心配性が高じれば、周辺への感謝にあふれることは間違いがない。名前を呼ばれ、部下や同僚の声に耳を傾ける余裕があれば、信望も自ずから集まるに違いない。人を喜ばせるには、人を尊重することであり、それは心配が心配だけで終わった事に感謝することなのだ。
イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント 花房 陵