物流不動産ニュース

物流、物流不動産、倉庫を網羅した
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この世で一番安くなった Corporate Real Estate(第9回) 物流マネー70兆円のゆくえ

平均物価や物の値段を左右するのは、言うまでもなく原価である。ではその原価には何が含まれているのだろうか。商品であればもちろん原材料が必要であり、生産には機械や労働力が必要だ。さらに、生産工場や流通倉庫、販売店舗などには不動産施設がある。

つまり、物の原価には物と人と不動産のコストが含まれている。

世の中の情報が一瞬で共有化され、話題が一晩で常識となってしまう現在、希少性とか機密情報とかはあまり意味を持たなくなってしまった。特殊な原材料はすでになく、特別な才能や技術を持った人材も限られている。しかも、工場倉庫店舗はどんな価格で取引されているかも瞬時に判明してしまう。

日本の伝統芸や人間国宝でなければ、物と人と不動産の原価は誰もが知りうる公開情報となっている。

その挙句が物価水準の低迷であり、我が国の生産性の低さだ。生産性とは売価に占める原価、すなわち物と人のコストと言える。

生産性が低いのは給与が安いからなのだ。

生産性の低さを労働の方法や勤務時間の長さで指摘することは誤りであり、誤解を招いている。付加価値とは原価と労務費のことであり、仕事の能率のことではないからだ。

しかも工場倉庫店舗という不動産も高額な投資資産ではなくなり、賃貸借契約で利用できる変動費然となり、供給側も巨額資金を全て自己責任で賄う必要もなくなった。
 
不動産の流動化という分割所有が可能となり、これもまた「安くなった」のだ。

不動産の移転や譲渡には多額の売買譲渡税金が課されてきた。土地神話やバブル再現を防止するためだったわけだが、環境は逆転して一気に取引が冷え込んできた。そのために譲渡課税を免除するためのスキームが登場し、それが不動産流動化という仕組みだ。
 
塩漬けだった不活動不動産を流動化によって免税での取引を再開させ、企業活動へのカンフル剤としているのがCRE(企業不動産活用戦略)と呼ばれるものだ。

工場倉庫店舗は今、このCRE戦略によって日の目をみるようになったのだ。

<イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント 花房陵>