物流不動産ニュース

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小売業 - 第2回 物流不動産&EC物流の解決力

小売業は我が国の最大産業と言っても良い規模である。1200万人の商人が135兆円を稼ぎだしている。全国に商店のない市区町村はなく、ネット通販がこれほど盛んに言われても、未だにわずか10%シェアがどうなのか、という状態だ。特にネット通販では、サービス業としての旅行や航空券などの商材ウェイトが高いので、過大に評価されがちだからだ。
小売業は地域に根ざした生鮮産品(野菜、果物、水産物)が最大の商品群であり、これは都会のコンビニ店舗には並んでいない。ネット通販が狙っている商材はここにあるのだが、鮮度維持という課題が悩ましい。

さて小売業成功の秘訣はどこにあるにだろうか。
それは立地と品揃えにある。それだけが勝敗を決める最大にして、最後の決定打となっている。
最高の立地は最大の投資を必要とする。店舗は紛れもない不動産であり、人出や世間の注目度合いは不動産価値そのものに示されるからである。銀座四丁目交差点が最高価格の不動産取引の対象であり、話題の店舗は繁華街にある。そしてそれは多額の投資を必要としている。
品揃えは店舗の広さ、大きさに関わり、それもまた不動産の規模といえる。
巨大な店舗の代名詞だった百貨店は、繁華街の中央に位置した多層階の巨大な不動産であった。
小売業の勝者は不動産による勝利で長く公式化されてきた。「富める者がさらに富める」という投資の法則が続いてきた。しかし、長引くデフレに直面した小売業も転換を余儀なくされてきている。
人出と世間注目の有利な<東京駅エキナカ>の立地は、規模こそ小さいが単位あたりの売上は圧倒的となった。
『丸井は駅のそば』よりも、<駅ナカ>にはかなわない。何より数百万人の通行客であふれる駅にかなう立地はないからだ。大資本といえども交通の要所を資本で手に入れることはできず、交通資本の優位性が新たに証明されているのが現代なのだ。
品揃えはエキナカに多様な店舗をマネージメント(計画的陳腐化と意図的な入れ替え)する、かつてのパルコ商法=テナントマネジメントに公式があった。JR、阪急阪神、近鉄、西武、東武、航空会社が旅客事業から小売業への業態転換を図る現在、流通勝者はここに極まるに違いない。

巨大な不動産(巨大な駐車場と巨大な店舗)を誇るイオングループが百貨店を圧倒している現在、最後の勝負が<エキナカ>と<コウガイ:住宅地>で競争している以上、どちらかに勝負がつくだろう。
立地と巨大な店舗という品揃えに競争する意欲と度胸は、中堅小売業には存在しない。勝負は見えているからである。どのような個性的な店舗もユニークな品揃えも、<エキナカ><コウガイ>を凌ぐことは不可能であり、所詮はコップの中の勝負、つまりは拡大も成長もすぐさま限界点に達することが明白なのだ。

そこで登場するのがECと物流が持つ、課題解決力なのである。
巨人アマゾンは<世界一の小売業>を宣言してきた。それは、どこよりも安く、どこよりも豊富な品そろえで、しかも顧客満足を極めているからである。顧客満足は必ずしも低価格ではないが、<欲しがる人にグッドタイミング>で商品サービスを提供し続けてきている。しかも、<欲しがる以前に、欲しいと思わせる>しくみ、リコメンデーション機能をネット上で展開している。
何かを探している時、アマゾンは<あなたのような人は、これが欲しいでしょ!>という、セールスをネットで提供しているのである。
立地と品そろえを超越したサービスと顧客満足、セールスマーケティングを実現しているのだ。
アマゾンに対抗できる小売業はこれから登場するのだろうか。店舗販売からECへどんどんシフトしてゆく流れの中で差別化要素はどこにあるのだろうか。
それでも店舗という不動産に拘泥することが必要なのだろうか。ECを支える巨大物流センターは、すでに銀座四丁目の店舗以上の稼ぎを生み出していることは確実なのだ。

(イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント 花房 陵)