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AMBプロパティジャパンインク マイケル・A・エヴァンス・代表取締役社長 − キーマンに聞く 第8回 

「キーマンに聞く」第8回目は、グロ-バルに物流不動産投資信託(REIT)を展開する日本法人AMBプロパティジャパンインク代表取締役社長のマイケ ル・A・エヴァンス氏。不動産への投資と物流施設の運営管理の専門家で、日本、韓国などAMBのアジア地区を指揮する同氏に、日本市場の動向と同社が果た す役割についてお話を伺いました。

Michael Evans

マイケル・A・エヴァンス社長

―経歴についてお聞かせください

 私の不動産キャリアは、1989年のエクイタブル不動産信託(EREIM) に遡ります。当時、EREIM は世界で最も大きい不動産投資顧問の一つで、法人顧客には米国の主要な公的年金基金や企業年金基金も含まれていました。EREIMでは13年間にわたり、 不動産の鑑定、証券分析、資産の管理や不動産モーゲージバンカーといった様々な役職を経験しました。

 2002年、AMBプロパティコーポレーション入社時に不動産取得の管理職に就任、米国西部地区の不動産取得を担当しました。2003年に新しい 分野である国際取引グループへ異動し、アジア地域の不動産取得と開発を受け持ちました。 現在AMBは、日本、韓国、中国およびシンガポールの不動産投資を行っています。

 2006 年には本格的に家族と共に東京に赴任し、AMBプロパティジャパンインク社長に就任、日本でのビジネスプラットホームを任されています。

―御社の概要、事業特色についてお聞かせください

 AMBプロパティコーポレーションは1997年にニューヨーク証券取引所で上場した不動産投資信託(REIT)です。AMBは物流分野に寄与する 物流施設を取得、開発、保有及び運用することをビジネスとしています。航空貨物、海上貨物、貨物輸送、3PL、小売、メーカー等の主要企業がお客様として 名を連ねており、世界的な貿易の中心的な役割を担うマーケットへの投資を主に行っています。中でも世界的な物流サプライチェーンを提供しうるマーケット、 つまり主要な港湾、国際空港と主要な地域及び国道に隣接したエリアへの投資を中心に考えています。

 AMBは、世界各地の主要物流市場における施設の開発、取得、保有、運用を展開する物流不動産投資信託のリーダーです。北米、ヨーロッパ、そして アジアの13カ国44マーケットで、2,800社にのぼるお客様をカバーしており、施設の延床面積は13,100,000平方メートルに達します。

 AMBプロパティジャパンはAMBプロパティコーポレーションの完全子会社として、2003年に設立されました。日本でのビジネススタンスは米国 のそれと同様のスタンスを取っています。東京の本社オフィスを中心に、2005年に関西地区、翌年には中部地区にオフィスを開設しています。現在までに日 本における所有件数は32棟、総延床面積は約100万㎡に達しています。

―AMBの特色についてお聞かせください

 AMBは物流不動産専門の不動産投資信託(REIT)として、他社とは一線を画しています。他用途の不動産、例えばオフィス、マンション、ショッ ピングセンター、ゴルフ場、ホテルなどへの投資は行っておらず、物流業界のお客様のニーズを追及及び理解することに100%集中することが出来るのです。

 AMB は不動産への投資及び管理に関する経験に自信があります。数度にわたる不動産マーケットのサイクル(周期)においても、不動産への投資やそのポートフォリ オの管理において成功した実績を有しています。この実績でお客様と強力で永続的なビジネス関係を築くことが出来ました。強調したいことは、AMBは会社と してのバランスシートも健全で、資本市場へのアクセスが円滑であるという点です。経済的なマーケットサイクル(周期)を通じて、物流不動産への投資と管理 を専門的に遂行できうる資本が潤沢にあるということです。

―グローバルな視点で物流の不動産業界を見てきた中で、日本市場をどのように捉えているか、お聞かせください

 国内の消費の観点からは、富裕層が人口の割合に占める比率が高くまた輸入量が多いことが挙げられます。つまりグローバルな観点からも、日本は世界 的なサプライチェーンの中で重要な位置を占め続けるでしょう。更に、日本は高い技術に裏付けされた高規格な技術力により、今後もハイテク産業の輸出の分野 で活躍することでしょう。

 しかしながら現在の経済状況は、低価格の生産ラインが更に人件費の安い海外マーケットエリアへとシフトし続けることを示しています。また今後の労働者の高齢化や少子化に伴い、日本は製造業中心の経済からサービス業中心の経済へシフトしていることが見て取れます。

 物流業務をアウトソースすることにより物流業務の効率化を図ることが、日本製造業にも多く見られるようになると思われます。3PL(サード・パー ティ・ロジスティックス)は正にサービス事業であり、多くの会社にとって、物流業務のアウトソーシング化は最も対費用効果の高い手法であると言えます。製 造業に提供するクオリティーの高いサービスを、国内外問わず提供することで、日本の3PL事業は世界的なマーケットにおいてもその地位を確保することが出 来るでしょう。従って日本の製造業が海外へ進出するに伴い、日本の3PL事業が世界で活躍し事業の拡大を図る可能性が高いと考えています。 よって、私は日本の物流業界は3PLサービスを輸出することにより、世界のロジスティックス・プロバイダーとしての地位を獲得することが出来ると確信して おります。

―具体的にはどのような課題があり、課題解消のためどの視点から事業展開されたのでしょうか

 個人的な意見としては、日本の物流業界はビジネス環境が変化する中でオペレーションに関する課題に直面するだろうと思っています。

 現在、日本の物流業界は3PLモデルに移行しつつあります。その過程において、経済的なスケールによる対費用効果メリットを享受するための物流業 界の統合等は不可避であります。ここで言う「経済のスケール」とは大企業が提供しうる、その企業規模から来る優れたサービスを指し、1) 優れた物流ネットワーク 2)大量な購買力と交渉力3) 高い技術を持つスタッフ 4) 高性能な運送力、そして5) 優れたITインフラ、などが上げられます。

参考例(課題):
 物流産業の統合を考える上で重要な問題は、お客様をサポート出来る適正規模の施設を効率的及び集約的に如何に所有できるか、にかかってくると思います。 この施設によりサービスプロバイダーは次の様な効率化を図ることが出来ます。 1) 数施設からトラック数台で配送するより、1つの施設から配送することでトラック台数を減らす事が可能になる 2) 1つの施設に多数のお客様の荷物を集約 することにより、人件費やITコストを削減することが可能になる。注意点は、施設が大きければ良いという事ではなく、施設の立地とデザインが益々重要にな ることです。

解決例(AMBソリューション):
 AMBはビジネスの集約や拡大含めた、機能的でより良好な立地への転換を目指す物流業者への不動産プロバイダーとして活躍していきたいと考えております。競争の激しい3PLビジネスの中でAMBは次のことを提供します。

1) 複数の物件所有から来る柔軟性:
 AMBは世界中の主要マーケットに物流施設を所有、開発そして管理しているので、単一の都市やマーケットを越えて世界中のマーケットで活躍するお客様のニーズに応えることが出来ます。

2) 新規入札に役立つ高性能な施設への視察:
 お客様が短期間に価格競争力のある入札を可能にするため、既に完成した良好な立地にある高機能な施設への視察が可能です。このことにより、物流会社はBTS施設展開や効率の悪い物流施設を利用することなく、効率的なビジネスの拡大を図ることが可能になります。

3) 短期賃貸借契約:
 AMBのビジネスは物流施設を開発や既存施設の取得を行い、賃貸することにより成立します。お客様は、BTS施設の賃貸ケースと異なり、短期間の賃貸契約期間を設けることが出来ます。お客様はビジネススタンスに則った期間の賃貸契約を結ぶことが可能になります。

4) 本業への資金集中等、自社資金の有効利用:
 AMB が施設を所有する為、お客様は自社で施設の開発や管理等への投資をする必要性がなくなります。更にAMBが既に施設を所有しているため、お客様は一定のロ ケーションから長期的にオペレーションをする必要が無く、場合によっては賃貸面積を減らす等お客様の効率に合わせたビジネス展開が可能になります。

―今後の3PLビジネスの拡大の要因についてどう思われますか

 私の個人的な意見ですが、3PLビジネス拡大の要因は次の内容が挙げられます。

 業界の整理統合
 1)M&A
 2)ビジネスの自然削減
 人材不足&人件費の値上げ
 競争
 海外製造業の成長
 燃料費の値上げ
 インフラ投資の必要性(IT、自動車等、設備)

―今年2月に開設した「春日井・小牧東ディストリビューションセンター」は、これまでの中で最大の規模であり非常に驚かされるのですが、実際にどのような工夫を凝らしたのでしょうか

位置付け:
 AMB春日井・小牧東ディストリビューションセンターは名古屋の中心業務地区の北東、小牧インターチェンジの東側に位置しています。名古屋市内や本州へ 向けたサービスを提供するには、最も理想的なエリアと言えます。この春日井における物流サブマーケット の出現の最大の理由は、東名高速道路と国道19号が交差する春日井のインターチェンジにあると言えます。土地が低価格なこと、交通量が少ないことも見逃せ ません。春日井小牧東ディストリビューションセンターは東名高速道路、中央高速道路、名神高速道路と中央名古屋(国道19号経由)に直結しており至便なエ リアです。

施設:
 賃貸面積91,600㎡のディストリビューションセンターで、お客様のサプライチェーン・グローバル化に伴うニーズに合わせ戦略的なロケーションにある 高性能な施設と言えます。6階からなる非常に高機能で高規格の物流施設であり、トラックの周回を考慮し、一方通行のランプが2つ建設されています。更にト ラックバースと駐車場の比率が高いといった特徴(トラックバース数:294台、賃貸面積312㎡に対してトラック1台)は、ランプのない施設に比較して効 率的な施設内容になっております。設備的にも、一般倉庫としての使用と同時に、十分な電力容量を備えており、軽作業、組立て作業、製品包装、気温管理に対 応している状況です。ユニークなL字型のオフィススペースとメザニンスペースは、この春日井エリアをカバーするオフィスや宣伝効果の期待できるショールー ムとして機能します。更に、駐車場は最大一般車390台、トラック12台を確保、3.5トンの積載を可能にするエレベーター4台、乗員用エレベーター8台 が設置されています。

▼春日井・小牧東ディストリビューションセンター概要▼
http://file.e-sohko.com/eigyo/e-sohko/butsuryu-fudosan/AMBKasugaiDC.pdf

-今後の物流施設への投資はどのようなものでしょうか

 従来の投資スタンスに変化はありません。物流マーケットの動向を踏まえながら、近代的な大型物流施設のニーズがある市場へ戦略的に開発を広げて行 きたいと考えております。AMBは単に売上を計上するために、施設の数だけ揃える事業を展開することはしません。投資家サイドへの責任を果たし、また実際 に施設を使われる荷主・物流事業者様にオペレーションの効率化を図れる最良の施設をいかに提供できるか、この点に留意し双方の需要を満たしていくビジネス に対応した事業を展開していきます。

―最後にこれからのビジョンについてお聞かせください

 AMBカルチャー(I-CREATE)を活かし、成長し続ける企業に育てあげることです。AMBではプロセスではなく、より良い結果を出せるよう お客様が求めるニーズに対し着実に応えていくことを心がけています。組織の1人1人が責任を担い、お互いを尊敬し、信頼を持ち、オープンな環境のもとでコ ミュニケーションを図り、チームとして行動していきます。将来的に私が米国に戻ることがあったとしても、日本にこのAMBカルチャーを徹底して浸透させる ことで、日本のスタッフが米国に負けないレベルで独自に物流不動産投資事業を展開できるようAMBジャパンを成長させていきたいと考えています。

▼AMBプロパティジャパンインクHP
http://www.amb.com/