物流不動産ニュース

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大倉 木村文俊社長 − キーマンに聞く 第4回 

「キーマンに聞く」第4回目は、物流総合商社として知られ、関西イーソーコドットコムの運営会社でもある大倉(本社=大阪市都島区)の木村文俊社長。同社 は『トラックを持たない運輸会社』をコンセプトに1973年設立。サブリースにも力を注ぎ、いわば3PLの先駆者として事業を実践。業界に向け、車両や倉 庫などの情報を同業者間で共有し、ネットワークを構築していくことの重要性を会社設立以来、訴え続けてきた。今回は木村社長に、同社の事業展開と物流不動 産についての考え方についてお話を伺った。

 

にこやかに取材に応じる大倉・木村社長

-まず会社の紹介からお願いします。

 大倉は、もともと『トラックを持たない運輸会社』をコンセプトに1973年に設立した企業です。

 設立前は、父の経営する運送会社で専務をしていましたが、コストに占める労務費の割合が高い労働集約産業であるなか、業界として、このままのやり 方を続けていれば、年々コストが高くなり、いずれ経営困難になるのはみえていました。倉庫業についても庫内にかかる人件費、設備費など、細かくコストをみ ていくと、多額のコストがかかっており、空き倉庫を埋めていかなければ、収支が見合わなくなることがみえているのに、実際には空いているのに、『埋まって いる』と見栄を張ってしまう現状があり、そうした旧態依然とした物流業界の経営体質に疑問を抱いていました。

 そうした状況のなか、あらたなシステムを考え、輸送や倉庫といった既成の枠に囚われない物流をトータルに見据えた提案を行い、実践していく、『物流総合商社』としての機能を有する会社を創ろうと思ったのが、会社設立に至ったそもそもの理由となります。

 物流業界では、自社が保有するトラックや倉庫に併せ、荷主に対し提案を行う傾向がありますが、それはあくまで『自社の立場』を優先した提案であって、お客様の満足を高めるものではありません。

 たとえばトラックの場合、同じ荷主でも、その時々によって、貨物量が違い、配達先も異なります。限られた車種しか持たない運送業者では、それに応 えるフレキシビリティーがないと考え、まずは業者を固定せずに、適時必要な車両を保有する会社から傭車する、お客様の立場にたった運輸会社をコーディネー トする会社として、当社はスタートしました。

 そうして輸送システムの合理化を提案する一方で、効果的な物流拠点開発を進めるため、サブリースにも力を入れました。従来、自社保有もしくは営業 倉庫を活用していた企業に対し、サブリースシステムによる物流拠点づくりを推進。土地の有効活用を考えるオーナーと新規拠点開発を計画する企業とを結びつ け、高効率で低コストの施設提供実現に努めていきました。

 また最近では定着しつつある、庫内事業のアウトソーシング(現在は当社独自の人材派遣業として展開を図っていますが、当時は業務請負の形としての 展開となります)も他社に先駆け、実施しました。当初はマテハン事業部の名称で推進してきましたが、ここでは物流業務合理化のための施策を提案し、必要な 人材を必要な時に必要な時間だけ提供していく、業務受託プログラムを用意。流通加工や配送管理、保管業務などのアウトソーシングにも対応しています。

 こうしてトータルな物流を見据えた事業については、1つの事業部のなかで事業展開を図るのではなく、輸送・倉庫・アウトソーシングなど、分野ごと に事業部単位に切り分ける形で整備しました。どんぶり勘定ではなく、分業制によるコストの可視化を図ることで、お客様が払える金額のもと最適なサービスを 提供するお客様本位の事業を行う一方、コスト叩きへの防御を図ったわけです。

-おっしゃられた事業内容は、いまでいう3PL事業にあたり、非常に先見性を持たれていると思うのですが、当時の物流業界で、それだけ危機感を持っていられた会社は少なかったようにみえるのですが。

 そうですね。

 実際、当時から、お客様である荷主のニーズに柔軟に対応していくためには、車両や倉庫などの情報を同業者間で共有し、ネットワークを構築していく ことが重要だと考え、所属していた大阪エリアにある物流団体に訴えていたのですが、そこでは受け入れられることはありませんでした。結果的にこちら側から 意識の高い同業者や異業種などを口説いて、独自にあらたな流通サービスを模索する研究会を作らざるを得ませんでした。

 それでも空き倉庫情報などの公開に関しては、消極的な企業が多かったですね。当時はとくに高度経済成長期とあって、『待ちの営業』で埋まっていた経緯もあって、話に耳を貸す企業は少なかった。業界のなかでは異端児としての扱いを受けていました。

 ただ私は現場、営業すべてに携わり、みてきた経験から、倉庫の在庫は波動などを考慮していると、埋まっているとはいっても、じっさいは60%程度 の稼働率にとどまっていることが多いことを知っているわけです。そこに倉庫賃貸料や設備費・人件費などを取り除いていくと、収益がなくなってしまう現実が ある。そこで倉庫在庫を、通年での在庫を見込める『A在庫』、季節波動のある商品在庫の『B在庫』、坪貸しして埋めていかなければならない『C在庫』に分 け、複合的な観点からできるだけ、稼働率を上げていくことを地道に実践していきました。

 それを効果的に行うために、有効な情報ネットワーク構築の必要性を同業者に訴えていたのですが、それに関しては、なかなか認められない歯がゆさを覚えていました。

-そうしたなか、イーソーコ(当時・アバンセロジスティック)に出会ったわけですね。

 空き倉庫のマッチングサイトシステムの紹介記事をある新聞紙面でみて、これだと思いました。早速、イーソーコに伺い、遠藤文社長らと会い、その場で関西版のイーソーコドットコムとして協業する形でいっしょにやりましょう、となったわけです。

 その結果、2004年4月より『大倉イーソーコドットコム』としてスタート。今年4月には、『関西イーソーコドットコム』にリニューアルし、機能 を大幅に強化させたわけです。イーソーコドットコムは当社なども含めた全国35サイト、すべて合わせると常時約8000件以上の物件情報を掲載した日本最 大の物流施設専門サイトで、有効な情報ネットワークとして機能していると思いますね。

-いまの物流不動産業界について、どうみていますか?

 業界を考えるということは、どういう施設が求められるかということになると思いますが、1つの流れとしては、保管型から通過型、集約化の流れが置 き、それにより外資系を中心としたファンドなどを活用した大規模の高機能型施設が次々と建設している。こうした動きが起こっていると思います。

 ただこれは大企業ではできることですが、中小企業ではなかなか、こうした動きは起こせない。せいぜい、できた施設を上手く活用していくほかないのではないかと思います。

 そうしたなか、中小企業はどうすればいいのか、という話になるわけですが、リニューアルして新しい価値を付加させ、お客様からみて魅力的な施設へと再生する、まさにイーソーコが提唱している『リファイン』が有効な鍵を握るとみています。

 ここでいう新しい価値を付加させた施設というのは倉庫だけにとどまりません。倉庫、不動産、金融の境界がなくなり、一体化したいま、物流施設だけ にこだわる必然性はありません。そもそも本来、物流というのは調達から販売までの領域を指し、生産施設、流通店舗のすべてをみていくことではないでしょう か。倉庫は空間を売っていく仕事であり、お客様が求める空間を提供していくことが重要となります。

 当社ではそうした考えのもと、サブリース事業では20年ほど前から物流施設にとどまらず、流通店舗開発、生産施設の提供を含め、さまざまな形での支援を進めてきました。

-冒頭にも少しお話がでてきましたが、業界に先駆けアウトソーシングにも力を注ぎ、現在では人材派遣業として、中国就労生を含めたビジネスを展開されていますよね。

 3年ほど前から人材不足が深刻化し、現在では日本全体で400万人程度の人材が不足しているとみていますが、こうした状況のなか、外国人も一部で受け入れていけないと考え、中国就労生を取り入れたビジネスを展開しています。

 ただ誤解されると困るのですが、当社では安価な人件費を目的に中国人の受け入れを行っているわけではありません。日本における中国人の受け入れに は、研修生といわれ3年ビザで、いずれ帰国しなければならない人たちと、大卒者限定の就労生といわれ長期滞在が可能な人たちの大きく2つに分かれるのです が、通常、人材派遣というと研修生と呼ばれる中国人を使うわけです。ですが、これでは短期ビザなので技術的に高い人員も育たないばかりでなく、法的遵守を 含めた管理体制の構築にもリスクを背負うこととなります。当社ではそれに対し、長期滞在ができ、法的な意味を含めた管理のリスクもなく、勤勉といわれる就 労生を活用することで、高い技術力を持った人材を供給することができるわけです。上海・北京・天津・瀋陽・大連などに赴き、中国企業12社との業務提携、 あと大連2大学と提携を組んで、人材確保に努めています。

 日本人よりもむしろコストが割高につくこととなりますが、全体作業をみていくと、勤勉性・技術力において、それを補うものがあるわけです。安かろう悪かろうの姿勢では駄目だと考えています。

 昨今、人材派遣業に関してはさまざまな問題が起こっていますが、当社では中国人就労生に限らず、“質”で勝負をしています。物流アドバイザーとし て、常にお客様の視点から、提案営業を図る。そうしたなか、何かトラブルを起こしてしまうと、すべての事業が連鎖的に影響を受けてしまうわけです。マテハ ン事業部の段階から、無闇な拡大路線を図らず、目が届く範囲のなかで、管理をきちっと行ってきました。そうした事業がお客様から評価を受け、リピートを受 ける形となっており、徐々に事業領域を広げ、関西地区に限らず、関東地区についても今年9月より人材派遣・紹介業の本格スタートを切ることができるように なりました。

 お客様とパートナー関係のもと、長くお付き合いしていくためには信頼関係がないと駄目。信頼を得るためには、いい加減な人は送れないし、いい加減な施設を提供することもできない。そう思っています。

-今後の抱負についてお聞かせください。

 お客様のニーズが変わる中、そうしたニーズを無視して、当社からこれをやっていきたいという『自己満足』的な意味での抱負はありませんね。

 やはり世の中が何を望んでいるのか。つねにマーケティングを行い、お客様がどういった問題を抱えているのかを知り、それを改善していくための提案をしていく。それが基本なんだと思います。

 いまの物流業者はトラックにしろ、倉庫にしろ、これだけのコストがかかるから、これだけの費用が必要と計算しがちなのですが、本来はお客様が支払 いできるであろうコストに基づき、設備や従業員の人数を決定し、最適なサービスを与えるものだと思うのです。自分で固定したハードを持っていたら、お客様 の要望には応えられなくなってしまう。物流コーディネータとして、お客様のニーズをどれだけ拾い上げていき、改善していくか。そうした経営理念は今後とも 変わることがありません。

 ここ最近のお客様のニーズをみて語るならば、中国の成長市場を受けて、単純に人材を受け入れるということだけでなく、今後は中国市場に対し、何が できるかということを考えていかなければならないと思っています。当社では人材派遣などの業務を通じて、中国とのパイプを持っていることから、すでに中国 物流に関するアドバイスを行っていますし、中国企業の日本市場参入のお手伝いなどもしています。今後、そうした話はさらに増えてくるのではないか、とみて います。

 あと、国内の動きとしては、関東エリアでの人材派遣・優良紹介業の本格スタートに続き、お客様のニーズを受けて、関東エリアの物流施設開発を主体 においた事業部を発足させていきたいと思っています。現在、開発営業幹部を募集していますので、興味があり、やる気のある方はぜひ、応募ください。

▼大倉HPはこちらまで
http://www.daiso-net.co.jp/