物流不動産ニュース

物流、物流不動産、倉庫を網羅した
最新ニュース・情報を発信しています。

  • メール会員情報変更
  • メールマガジンバックナンバー
  • ニュースメール配信登録

日本土地評価システム 山本高大・都市マネジメント部グループ長 不動産鑑定士・税理士 − キーマンに聞く 第17回 

 遊休地や、賃貸不動産に時価会計が適用される。平成22年3月期決算以降、上場企業に“任意”で課せられる。金融庁企業会計審議会では、その状況を見 て、平成24年3月期以降の決算、会計方法の方針を決めるという。しかし、“任意”なのは、「モラトリアム」でしかないという考えが一般的だ。不動産の時 価会計は、国際会計基準(IFRS)に合わせた動き。会計基準が変更になれば、上場企業はもとより非上場企業にも、不動産の時価会計が必要に迫られる可能 性が高い。不動産について詳しい日本土地評価システムの山本高大・都市マネジメント部グループ長に話を聞いた。

yamamoto

<写真・山本高大・都市マネジメント部グループ長>

▼物流業界にも影響する不動産の時価会計

 ―最近、倉庫会社から、不動産に関係する問い合わせが増えている。

 山本 当社は、もともと市町村向けに固定資産の評価システムを作成している。そこから派生して、都市の再開発 事業コンサルタントや、CRE(企業の不動産)戦略の策定などのお手伝いをしている。そのため、顧客としては行政関係が7割、企業が3割。行政関係が強い のだが、倉庫関係の方が当社のホームページを見に来ている。不動産の時価会計に対する関心は高いと実感している。現在、企業へのアプローチを強化してい る。

 ―今回、騒がれている時価会計とはどのようなものなのか。

 山本 企業が持っている不動産は、買ったときの値段(簿価)で貸借対照表に計上している。その中から投資用不 動産と呼ばれている遊休不動産、賃貸不動産などが時価会計となる。ただし、賃貸対照表には、今までどおり簿価で計上。時価会計の数値は欄外に注記という形 で表示される。非上場企業でも、監査法人・公認会計士による監査が必要な規模(資本金5億円以上または、負債が200億円以上等)であれば、対応しないと いけない。任意となっているが、監査法人さんも対応するように言っているため、今回の決算は、大半の上場企業が時価会計を発表してくるだろう。

 ―なぜ時価会計へ変更しないといけないのか

 山本 会計基準の変更という問題だ。日本の会計基準と欧米の会計基準は異なっている。グローバル化などで、会 計基準を欧米の「国際会計基準」に合わせていこうという大きな流れがある。ただし、突然、国際会計基準に変更したら、混乱が生じる。そのため、段階的に国 際会計基準を適用していっている。今回の不動産の時価会計もこの流れに乗っている。そのため、平成24年3月期決算まで任意でやり、それ以降は状況を見て 判断となっているが、時価会計に変更する方向だろうというのが大半の見方だ。

 ―物流施設を保有している物流企業にも影響がある。

 山本 十分にありえる。物流施設を自社保有している物流企業は多い。その中で、賃貸している物件もある。ま た、物流施設を建てようと考え、土地を保有していることもあるだろう。そういった不動産が時価会計しないといけなくなる。だから、当社のホームページを見 に来ているという現象が起こっている。関心も高いのだろう。今回の決算で、物流企業各社がどの程度自社物流施設を賃貸物件としているのかが分かるようにな る。

 ―時価会計というとマイナスのイメージがあるが。

 山本 そんなことはない。現在、上場企業を中心としているのは、不特定多数の人が株を売買できるからだ。その 会社の不動産が簿価でしか分からないと、実際の資産規模が分からなくなってしまう。固定資産が小さいため、連動して株価も低い企業が、実は、時価会計で計 算すると価値の高い不動産を持っているケースがある。過去にそういった企業がファンドなどに狙われ、株の買占めが起こった事件もあったため、情報をできる だけ公開しようとする背景もみられる。時価会計にすることで、資産の評価が上がる企業もあれば、下がる企業も出てくる。

 ―株価関係なら、非上場企業はほとんど関係ないと思っていていいのか。

 山本 非上場企業も時価会計への対応を考えておいた方がいい。現在は、株の関係で上場企業が不動産の時価会計 を行うように言われている。しかし、根本は、会計基準の変更。そうなると上場企業だろうか、非上場企業だろうか、全ての企業に適用される。そうなるかどう かは、まだ不確定だし、実際に対応するとなると、猶予期間が置かれるだろう。それでも、早めに考えていた方がいいだろう。ここ1、2年で、企業会計審議会 の方針が発表されると考えられている。

 ―企業としては、保有不動産の戦略がより重要になる。

 山本 不動産の現在の価値があらわになることで、企業も戦略を考えてくるだろう。老朽化している建物を建て替 えるのか、売却するのか。選択を迫られる。今回の時価会計は、ただ不動産の現在の価値(金額)を出すだけではなく、財務にも直結する話。企業のCRE戦略 にまでかかわってくる。特に、工場の海外移転で、日本に工場跡地を持っているメーカーは多い。そういった土地が、この機に動く可能性は高い。

▼企業の対応は二極化。まだまだのところが多く

 ―これだけ騒がれていると、時価会計の企業側の関心は高いのか。

 山本 一概にはいえない。しっかりやっている企業は、既に体制を整えている。ただし、そういった企業は一握り。当社の問い合わせの多くは、「時価 会計をやらないといけないようだけれども、何をやったらいいか分からない」というもの。関心はあるけれども、具体的な対応策までは踏み込めずにいる。監査 法人さんでも情報を集めているので、相談しながら、少しずつ進めていくのがいい。監査法人さんは会計のスペシャリストだが、不動産の時価会計のスペシャリ ストではない。当社の場合、監査法人さん、企業さんと3社で一緒になって話を進めていくケースもある。

 ―実際、時価会計に変更するのは大変なことなのか。

 山本 不動産を時価会計する場合、原価、市場性、収益の3つの計算を行う。それによって正確な時価会計とな る。ただし、相当な労力が必要だ。賃貸不動産や遊休不動産を大量に所有している企業が、該当する不動産全ての正確な時価会計で計算するのは現実的ではな い。そのため、重要な不動産以外は、概算評価で構わないとなっている。それを“みなし価格”といっている。「重要な不動産」とは何かという正式な定義はな いが、簡単に言うと時価会計にしたときに財務に影響が大きいものだ。

 ―時価会計に対応するのに必要なコストは。

 山本 大手企業の体力から見たら、大きなものではない。しかし、中小企業にとっては大きい。もし、非上場企業にも拡大されるということになると、コスト負担が経営に影響することも出てくるだろう。

 ―概算評価できるシステムを販売している。

 山本 (前出のとおり)市町村の固定資産税の評価システムを作っており、当社はシステム関係が強い。そのノウ ハウを利用して、簡易に大量の不動産を“みなし価格”で概算評価できるシステムを構築した。これで、時価会計の労力を大幅に削減でき、企業にとって優秀な 人材を本業に注力させることができるだろう。コストの削減も十分に考えられる。