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流通経済大学 矢野 裕児教授 − キーマンに聞く 第30回 

[対談] 人が変える物流の未来 ~物流業界に必要な人材とは~

物流業界のみならず、国内の多くの産業分野で人材不足が課題となっている。特にここ数年来の流通形態の変化によって生じた過当競争によって、生き残りのための付加価値が企業にも人にも必要とされている。こうしたなか、物流業界を再活性化させる人材とは。矢野裕児・流通経済大学教授と大谷巌一・イーソーコドットコム会長がその必要性と育成を語り合う。

 
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[右] 矢野 裕児:流通経済大学流通情報学部 研究科長 教授 工学博士
[左] 大谷 巌一:株式会社イーソーコドットコム 会長

 

求められる“オフェンスとディフェンスの均衡”

大谷:矢野さんは物流を専門とする流通経済大学で教育と研究にあたっておられます。今後の物流業界に必要な人材を企業に送り出す立場に立たれているわけですが、もともとは建築エンジニアという理数系の分野にいらっしゃいました。数学的な見方ができる人材の必要性という意味からも情報分析は必須になっていくと思いますが、「流通情報」も今後の物流にますます重要性を増す分野かと思います。

矢野:私が所属している学部は「流通情報学部」といいます。ロジスティクスを柱としているのですが、流通科学と情報科学を融合した学部になっています。これまで流通というと文科系という見方が強かったかと思いますが、これに科学的な見方を加えたのが「流通情報」です。ロジスティクスに必要な人材を考えるうえでも、特に高度な人材であればいろいろな視点から見ることができることが重要だと思います。経済や経営、商学などを教える機関はたくさんある一方、日本には物流を学問として扱っている大学は多くありません。しかし流通を理解するためには、経済、経営を含めた多角的な視点が必要です。幅広い視点から物流を捉えようというのが特徴です。

大谷:ロジスティクスと数学は切ってもきれないほど結びついていると思いますが、矢野さんも理数系です。やはり物流にも数学的な見方ができる人材が必要だということでしょうか。

矢野:高度な数学はともかく、一般的なレベルであれば、少なくとも数字を見ることができることが基本だと思います。ただ物流では、他の分野と違いイレギュラーな事態が起きた際の対応が特に重要になってきます。物流はものの流れが多様でデータの蓄積が難しく、一定の標準パターンがあったとしてもそれだけでは収まりきりません。数字を単純に分析できるかよりも、何か問題が起きた時に数字をどう解釈できるか、どう対応し解決できるかという力のほうが要求されているのではないでしょうか。そのためにはいろいろな知識も必要ですし、事態を読み解く力も必要です。

大谷:物流というのはよく受け身といわれます。風が吹けばおけ屋が儲かるではありませんが、例えばあるメーカーで生産が過剰になったら倉庫を用意しなければなりません。要因は常に他者の側にあって、それによって動かなければならない。受け身にならざるをえないのです。しかし物流業界をとりまく環境が厳しくなっていくなか、物流業界が自ら仕掛けられる手段をもったほうがいいのではないでしょうか。「流通情報」という学問には、物流においても自分から仕掛け、さらに戻ってきた情報を分析することの大切さが端的に表れていると思います。物流においても情報は切り離せなくなっていますが、こうした流れに対応できる人材を育成されている矢野さんの講座に、私は希望を見出しているところです。

当社ではかねてより「物流不動産ビジネス」の有用性を提唱していますが、人材という観点では物流と不動産の両者に直接的な接点はありません。物流はディフェンスを重視し、リスクをリカバリーする能力に長けています。一方の不動産はリスクをあまり考慮せず、どんどん情報を集めてどんどん発信するオフェンスに力点を置いています。今の激変する経済状況下では不動産的な動き方をしている人たちのほうが有利です。物流業者さんがオフェンス性を高めれば、従来もっている高いディフェンス性との良いバランスをとることができると考えています。

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付加価値を持った人材の育成が急務

矢野:物流に求められる人材といってもシステムの構築から現場のドライバーまで職種は幅広いわけですから、なかなか一概にはいえません。しかし例えばドライバーなら、以前はただ荷物を運んでいればよかったわけです。ところが今は、その会社の看板を背負うセールスマンという意識が求められてきています。そういうドライバーがそろっている会社はやはり強いと思います。特に意識が変わってきたのが、着荷主というキーワードです。着荷主に対するクオリティを上げるということは発荷主に対するクオリティを上げるということにもつながります。

大谷:おっしゃるとおりで、評価されることで従業員も物流が楽しくなると思うのです。そのためには雇用側にもダイバーシティマネジメント、すなわち多様な価値観を認めるという姿勢が必要です。当社で雇用している従業員も、家族との時間を大切にしたい人もいれば、経営に加わりたい人もいる。どちらもそれぞれの価値観ですから良いのです。しかし、すべてを同じ評価にしてはかえって不公平です。個性や個人の価値観に合った働き方をしてもらい、会社は各々その働き方に順次メリハリを付けて差別化して評価する。当社では今のところうまくいっています。

物流業者も、減点主義ではなく何をプラスしたかで評価してほしいと考えています。例えば矢野さんの講座を受けて卒業すれば、それだけで付加価値をもった人材になる。企業側もその付加価値を認め、プレミアをつける評価をしなければならないというようにです。

矢野:しかし私の講座も、残念ながらまだ物流業界に新しい提案ができる人材育成というところまではいたっていません。物流の世界は1つの正解があるわけではありません。さまざまな環境条件のなかで、よりよいものを構築していくことが問われます。基礎の部分はもちろんですが、その上で他の人と何が違うのか、何ができるのかを考える、こういう人材は、まだ養成できていないと感じています。私たちの役目として、今後は付加価値を持った提案ができる人材を育成し、企業に送りこまないといけないと感じています。

大谷:人材を受け入れる企業の体制も問われています。例えば物流不動産ビジネスは、それ自体が物流企業にとっての付加価値になるとともに、一定のインセンティブを提示することで個人のやる気を引き出すことも可能です。軸足はあくまで物流に置いていますが、守りの姿勢から攻めの姿勢に変革することで従業員の評価基準もより幅広くできるのです。優秀な人材を確保するためにも、物流業界を夢のある職場にしなければなりません。物流不動産ビジネスは、業界全体を活気づける起爆剤であると考えています。

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国際物流総合展2021