物流不動産ニュース

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不動産プロバイダー、来たる 

インドのホテル運営会社・OYO(オヨ)の日本上陸が話題になっている。日本ではヤフーと合弁会社を設立し、「OYO LIFE(オヨライフ)」とのブランド名で住宅の賃貸事業を開始した。黒船来航とか不動産版アマゾンの襲来とか騒がれているとおり、ただの不動産会社ではない。

騒がれている理由をユーザー目線でいえば、最大のものはその手軽さだ。全室に家具と家電を完備し、賃料には公共料金やWi-Fiなどの通信費、定期的な部屋の清掃代まで含まれている。仲介手数料も敷金・礼金も無料で、基本的に入居契約期間もなし。しかもそんな部屋が不動産屋に出向くことなく、ネットで簡単に借りられるのだ。

ユーザーは好きな部屋に好きなときだけ住むことが可能になるわけで、この戦略は従来の不動産賃貸という概念を覆す可能性を持っているといっていい。OYO はもともとホテルの宿泊料を日によって大幅に変動させるダイナミックプライシングという手法で急成長した。この戦略も、その出自を考えれば納得できるものがある。

これだけでも騒がれるには充分かもしれないが、不動産業界のざわめきの理由はほかにもある。OYO LIFE で提供される賃貸物件は、全て家賃保証がされたサブリース物件なのである。

サブリースの仕組み自体はそう珍しいものではない。物件をオーナーから借り上げて他の人や企業などに転貸するもので、サブリーサーと呼ばれる事業者はリーシングや入居者対応、物件の管理、修繕などをオーナーに代わって行う。オーナーは物件にも経営にもノータッチで安定した収入が補償され、サブリーサーは物件稼働率というリスクがあるもののイニシャルコストを抑えつつ一定の不動産収入を得ることができる。物件を持たないため市場の変化にも追随しやすく、資産を持たないため税制上のメリットも大きい。

良いことづくめに見えるサブリースだが、現状では問題点がクローズアップされることも多い。オーナーには賃料補償をうたいながら減額した賃料収入をオーナーの取り分に転嫁したり、当初の契約とは異なる物件運営をしたりといったニュースを目にしたことがない人はいないだろう。そして昨今のこの問題の焦点の多くは、オーナーにサブリースを前提とした物件を取得させている点にあるといっていい。

OYO LIFE では既存の物件がメーンになるようで、今月末までに1000室以上を確保するとしている。借り上げた物件には、ホテル運営で培ってきた価格適正化とブランディングのノウハウを導入し、さらに入居者に対するホスピタリティやユーザビリティを適切に提供していくことで、その価値を向上させるという。直接的な表現はないが、これは賃料アップを狙うことと同義といっていいだろう。価値を最適化(=向上)させた物件を迅速に提供するその姿は、もはや仲介業者でもサブリーサーでもない。ユーザーとサプライヤーをネットでつなぐ、不動産プロバイダーとでも呼べばいいだろうか。

ちなみに OYO の筆頭株主は、ソフトバンクグループのファンドだという。

 

久保純一 2019.3.20