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中央三井信託銀行・不動産投資開発部 中林増夫・主席調査役 − キーマンに聞く 第7回 

「キーマンに聞く」第7回目は、不動産証券化業務を草創期から手がけ、三井物産、ケネディクスとの3社で、物流不動産専門の投資法人「日本ロジスティクス ファンド投資法人」の創業に関わった中央三井信託銀行・不動産投資開発部の主席調査役を務める中林増夫氏。同氏に物流不動産市場の展望と、中央三井信託銀 行が物流不動産に果たす役割について、お話を伺いました。

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中央三井信託銀行 中林主席調査役

―まず中林さんの業務内容、物流不動産向け業務の関わりについて、お聞かせください。

 私が所属する中央三井信託銀行不動産投資開発部の業務は次の5項目となっています。

 ①J-REIT新規上場の支援と既存J-REITの成長育成
 ②既存私募ファンドの支援
 ③開発型ファンド案件の支援
 ④事業会社等に対するCRE戦略(不動産の保有・活用戦略)提案
 ⑤海外投資家との調整

 このうち、私の業務範囲は①②③④の4項目に当たります。

 また、私が関与している物流不動産向け業務は次の3項目となります。

 A.J-REITや私募ファンドの案件組成
 B.開発型ファンドの案件組成
 C.事業会社(メーカー、小売、卸売等)に対する物流効率化及び拠点再構築提案

 このうち、Bについては、おもにファンドに関わる開発工程のサポート業務となるのですが、これを詳しく説明すると、「物流業者や荷主のニーズに基 づいた土地の発掘」から「ファンドによる物流施設建築」、さらに「J-REITやファンドによる竣工後の建物と土地の保有」(物流業者等が建物を賃貸借す るまでを指します)までの工程をサポートいたします。

 弊社の特色としては、物流施設にとどまらず、住宅、商業施設、宿泊施設など多様のアセットを取り扱っておりますので、広い視野で各不動産の最適性 を判断しながら案件を推進できる強みがあります。同時に、弊社は金融機関ですので、運用調達における運用面だけでなく、調達面、キャッシュフロー、施設使 用者の事業継続性のバランスと遵法性を常時考慮した上で案件のサポートを行える特徴があります。

 因みに、信託業界全体における資産流動化型信託の信託財産額は2007年9月現在で、24.1兆円(前年同月比3.5兆円増)ですが、そのうち弊 社の信託財産残高は2007年9月現在で4.7兆円(前年同月比1.7兆円増)ですので、業界全体に対する弊社のシェアは約20%を占めています。

―中央三井信託銀行が、「物流不動産向け市場」に注目した時期、取り組みを始めた契機についてお聞かせください。

 「物流不動産向け市場」については、①不動産そのものとしての関わり、②投資用不動産としての関わり、の2つの視点でみることができますが、不動 産そのものとしての関わりでみると、いまから14年前に「物流不動産」(当時そうした言葉はありませんでしたが)に注目し、ターゲットに置いたビジネスを スタートさせています(ちなみに弊社の「不動産部門」は前身会社の開業時である1924年から組織されています)。

 1994年当時はバブルが崩壊し、オフィス・住宅向け市場が冷え込んだ時期であるとともに、経済活動における「物流部門」が注目され、3PL事業の推進や、荷主による工場・配送センターの拠点配置の見直しが図られた時期でもありました。

 そうした実需に基づき、従来のオフィス・住宅などの市場に限らず、多様化を図り、合併前の前身会社の1社の不動産部門に「工場・配送センターチー ム」を組織したわけです。この「工場・配送センターチーム」は、工業系用途の実需に基づく、不動産取引をビジネスの狙いとしていたわけですが、物流不動産 に注目したのは、この頃といってもいいでしょう。

 バブル崩壊による実需の変化に対応した取り組みが、弊社による「物流不動産」業務の第1弾とすると、投資用物流不動産として関与したのは2003年、5年前からとなります。

 オフィス・マンション含め、弊社が不動産証券化業務を開始・実現したのは、1998年で、この時設立したSPCは国内全体で数えても2番目となる ものでした。つまり投資用不動産への関わりは1998年からスタートしたわけです。その後、東証がJ-REIT提唱のIRを実施したのが2000年、 J-REIT第1号が2001年に上場し、投資用不動産の市場が整備されてきました。

 こうしたオフィス等の企業のオフバランス化の動きを受け、物流施設のオフバランス化の検討も進められ、投資家不動産としても物流は注目も集め、弊 社も2003年、三井物産様、ケネディクス様との「物流施設特化型REITの共同事業開始」をIR。2005年に「日本ロジスティクスファンド投資法人」 として東証に上場を果たしたわけです。

―現在の物流不動産市場について、どうみていますか?

 前述のとおり、弊社が取り扱っている不動産は物流向けだけではなくオールラウンドであり、かつ弊社は金融機関ですから調達側(つまり金融市場の側面)からもマーケットを観ています。

 私見ながら結論として、物流不動産は単に不動産の一部にすぎませんので、基本的には国内不動産全体のトレンドと経済・景気の流れに沿うものと考え ます。但し、倉庫賃料の変動率は比較的小幅ですので、物流不動産については、ある一定の論理的な価格帯で安定しつつあると思います。

 一方で、アセットタイプ別の特徴でみていくと、ホテルやデイリーマンションのように短期入居での対応を図れる施設とは違い、長期賃貸の考えのも と、入居テナントを入れる必要性があります。企業の統廃合や経営環境・企業方針などの変化などによって、万が一、テナントが短期ででていったときのリスク は背負う部分があり、入居テナント企業や様々な施設状況を鑑みての個別性が高い物件といえるところもあると思います。

 「物流不動産」はこの数年の事例として、需給の密度が濃いエリアにおいて、物流施設のスクラップアンドビルドが進み、これを物流業務そのものに活 かせた物流業者様や荷主様にとっては有意性があったと聞いています(拠点統廃合の推進、商流転換、TC/DC/PCの創造、3PL推進など)。

 一方で、その逆事例として、物流不動産施設の進出により、倉庫が空室になったという話も聞いておりますので、短期的な損得でいえば、物流業者様からみて「物流不動産」は、各社様々と思料します。

―そうした物流不動産市場のなかで、中央三井信託銀行が果たす役割は、どのようなものがあげられると思いますか。

 次の2点に集約できるのではないか、とみています。
 1つ目は「不動産情報の集積点」。
 つまり、情報といったソフトと不動産といったハードとの需給の出会いの場を創造することです。

 2つ目は「資産流動化・証券化(不動産信託受託)における金融サービス機能」。
 つまり、資金と時間(ビジネスのタイミング)を創造することです。

―今後の物流不動産については、どうみていますか?

 土地や賃貸はどこまで上がるのか、という含みのある問いかと思いますが、私見ながら、物流不動産の上値は限定的だと思います。

 上がり過ぎた場合、その不動産はどの物流業者にとっても採算が合わず、その不動産は他の用途に転用されるためです。

 一方、物流不動産がビジネスの場である限り、スクラップアンドビルドは常時続きますので、優勝劣敗のマーケットになると思います。また、スクラッ プアンドビルドのスピードはエリアと需給密度に起因しますので、貨物のトレンドと投資効果を読み間違えると負け組になると思います。

 この他、施設活用を物流に限定せず、オフィスや商業店舗などへのリプレースによって収益性や資産価値を向上させる動きは今後も続いていくとみています。

―今後の抱負についてお聞かせください。

 弊社にとって金融と不動産はもともと生業です。これを機会に皆様が、信託銀行に対する親近感を持って頂ければ幸甚です。

 私の業務上、物流施設の現場は陸海空含め2000件以上観ています。目的は売買、賃貸借、物流改善、オペレーション視察など様々です。この経験もあるため、社内外から多種多様な相談をお受けしています。

 最後に抱負を1つ。
 一緒に物流施設や貨物を創造しましょう!
 皆さん、これが一番楽しいことだと思いますので。

▼中央三井信託銀行HP
http://www.chuomitsui.co.jp/