新年度を迎えて new era -第28回  物流不動産Bizの人材開発
人材の育成と教育は企業が行うべきものだろうか。
答えは2つあり、第一に人材こそ企業活動の重要な資産であり、欠くことができず、さらにその質が経営成果を左右するものだからである。
第二には労働市場での優位性を獲得する手段であるからだ。
「この企業なら自分は成長できる」という予感と実績は希少な人材への競争優位なポイントになるだろう。
育成は即戦力への備えではなく、過去を学び、未来への備えと開拓にある。
愚者は(自分の)経験に学び、賢者は歴史を学ぶ
過去は直せず、現在は不確実であるが、未来は自らが切り開くことができるからこそ、学びと挑戦が何よりも重要なのだ。
「物流は生きることに等しい」と個人も企業もその重要性を理解している。しかし、過去を振り返れば物流はその顧客の成長と共にあり、とても自律的な活動を行って来たとは言えない。言われるがままに追われ、追い込まれて今の苦しい状況があるのは事実だ。とても未来を切り開いて来たとは言えない。
これからも同じ道を進むなら物流は魅力の職業とは言えない。だからこそ、産業の裏方から逸脱しなくてはならない。その環境と道具が揃っているのが現代と言えるだろう。
ITとECは物流ビジネスを根底から変えるパワーを持っている。情報革命が産業構造を変えたように、物流もまた大きく変わろうとしている。その流れに乗るには若さと情報センスが欠かせない。体力や経験を超越したビジネスの成功条件がITとECなのだ。
ファブレスメーカーという工場を持たない製造業が登場している。無店舗販売はリスクを取らない弱者の流通業ではなくなった。世界の覇者アマゾンは物流を武器に流通そのものを変えようとしている。いずれの新業態も物流があっての成功事例だ。
トラックと倉庫が物流の本質ではない。如何にそれらを駆使するか、コントロールとマネジメントを行うかが物流ビジネスの原点にある。
所有と利用が区別され、リスクの裏にあるチャンスはコントロールできる時代にある。それが知価革命の本質なのだ。
繰り返そう、ITとECは物流ビジネスに欠かせず、それを駆使できるのは最後までヒトなのだ。ロボットも話題のAIもそれを使うヒトの裁量で成果は投資を上回ることができる。これこそが日本に残された生産性向上策の道なのだ。
物流業が低い報酬に甘んじているのは、仕事のせいではなく、価値創造の力不足と思わねばならない。ふさわしい報酬を得るためには、優れた価値を生み出し、企業に利益をもたらさなければならない。
そこに気づき、生み出し、育てあげるのは紛れも無い若い人材であることを知り、そして決意と覚悟を持って臨んで欲しいのだ。
イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント 花房 陵