3PLの登場 - 第6回 物流改革大全
製造業の倉庫係、配送係として発生してきた物流業務は、ある時から専業者への業務委託で行われるようになった。それは製造業の稼働時間や従業員の給与体系で物流業務は間尺が合わなくなってきたからです。
始業や終業が画一的に決まっていた工場とは別に、製品在庫管理や輸配送業務は単独で相手次第という動きを余儀なくされてきたからです。
そのうち、在庫管理と輸配送をセットで請け負うような専業者の台頭があり、自社でも委託先でもない第三者という意味で3PLというビジネス形態が生まれてきました。仕事を委託するだけですから、大したことはない、業務の移管に過ぎないと思われましたが、頼む方の都合と請け負う側の都合は見事に一致して、しかも頼み甲斐があるビジネスであることに気づいたのです。
第一に時間帯が違っても工場の就業規則とは別物で動くことが出来ました。次に工場よりも平均年齢が低くて済むから、結果的にローコストで運営が可能になっていたのです。
平均年齢の違いは経営上でも大きなアドバンテージがあるのです。かつて、流通業の双璧としてダイエーとヨーカ堂が競っていた時、その売上高より利益額の違いが話題になりました。
「なぜ、ヨーカ堂は同じ売上でも、ダイエーの2倍の利益が出せたのか」と調べたら、従業員の平均年齢が綺麗に10歳違っていたと言われています。
同じような仕事を同じような時間帯でこなせるなら、そのコストは従業員の平均年齢に比例してインパクトがあるものです。
3PL事業者は従業員を社員と非正規社員で運営しますから、平均年齢は圧倒的に低く保つことができます。このことが3PLビジネスの優位性になっていたのです。(労働者派遣法が改正されるまで、工場には派遣労働者はいませんでした)。
3PLの定義は様々ですが、自営物流を委託するので、受託側は業務範囲が広がり、しかもコスト志向の強い意向が働きますから、総合コストダウン成果を期待していたし、また事業者はそれをコミットできたのです。かくして、製造や販売の事業者にとってコストという悩みの種の物流は3PL事業者の登場によって解消されてゆきました。
時は移り、3PL事業者をマネジメントするだけのために物流子会社が誕生していきます。コスト把握、コストダウンという目標が達せられるとその物流子会社も存在意義を失い、再び本社に統合されてゆきます。
つまり、物流コストは下がり続けるけれどもゼロにはならない。しかも、運営原価に近づくに連れて、コストドライバーというコスト原因が製造や販売という本来の主体行動にあることに気づくのでした。
作り方を間違えれば(販売計画<生産実績)在庫が膨らみ、コストがかさみます。売り方を間違えれば(顧客サービスの基準ズレ)過剰な物流サービスでこちらもコストが青天井になります。
結局物流コストを左右しているのは、自らの事業そのものであることに気づいた時、物流を外部に頼ることの意味や意義が見失われることになるのです。現在がこの流れになってきています。3PLビジネスは早くもピークを過ぎたと言えるでしょう。
絶対に物流を委託しないという決意を持ち続ける企業があります。製造も販売も物流を通じて顧客に届け終わって初めて自社の責任を果たしたと自覚する企業は、物流活動を外部に委託するわけには行かないのです。コントロールは最終最後の物流が最も危うくて、しかも重要だと認識しているからです。
事業の改革や改善はコストだけではない、将来にわたっての存続であり、信用の積み上げてあるなら、自社の及ぶところには外部を入れない決意というものも見事な戦略と言えるでしょう。
物流をアウトソーシングするのは経済的な視点を重視することでしょう。逆に、アウトソーシングを決してしないというのは、商道徳、信用の担保を重視することになり、両者は戦略の違いということになるのです。
(イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント 花房 陵)