築き上げる - 第15回 物流不動産Bizの人材開発
優れた人材は生まれながらにしてあるのではない。ヒトの人格と振る舞いは出自それだけで形成されるものでもない。育つ環境と導くヒトによって培われる。それは企業内組織でも同じだ。優れた人材は、優れた組織、優れようとする社風によって築き上げられるものだ。
企業文化や社風、雰囲気こそがヒトが育ち、築き上げる文化を創りださねばならない。玉は磨くというが、磨く道具と方法こそが輝きを生み出すのだ。
組織を活性化して自らが学び、課題解決に取り組み、自己成長と企業のそれを同じに考えられる価値観、文化を作り出すには成り行きや慣性の法則に従うだけでは不可能だ。だからといって理念経営やトップのビジョンを語り尽くせというものでもない。
理念やビジョンは価値観の揃った人材には共通言語となるが、進化過程にあるヒトには受け入れることすら厄介な場合もあるからだ。業務経験の多寡や前職で染み付いた常識、感覚、感性を統合して新たな社風に従わせるのは、個人の人格以上に組織の前提が必要になる。
今、人材開発の最先端にある技術と知識、理論や手法は<対話と学習>にあるという。
命令と強制、権限と執行ではないのだ。業務や能力は決められた職制と分掌やルールだけでは尽くせていない。組織を巡る様々な課題が人事や労務の問題として多発、揺らいでいるのだ。
評価と報奨、目標設定、業務管理指標、モラル・モチベーション、マインドセット、メンタルヘルス、ハラスメント対策、定着と離職率、コンプライアンス、セキュリティ、知財管理〜
様々な問題はヒトが組織を無視した行動で引き起こされてしまう。ルールの厳格化や罰則規定だけでは対処できない事態がここかしこで散発しているのだ。地道に着実に築き上げる障害が多発する実態を踏まえて、組織開発、人材育成、能力開発の大原則を意識しておきたい。
- 欠点は長所の伸長でカバーできる(弱点補強の時間よりも、強みの強化が効果的)
- 対話とは聞くことである(自身をマジックミラー越しに置き、他の判断や意見を聞く)
- 教育とは自らが望むこと(渇望や欲求のないところに習熟はない。評価報奨では学べない)
組織文化を正しく保つことが育成と定着となり、人材の離脱を防止するには<対話と学習>のある職場環境を作らねばならない。
離職者面談で常に聞かれるつぶやきは、「私の意見など聞いてもらえなかった」と熟年離婚や恋人との別れ際がピッタリと重なってくる。
ヒトは自らを尊重してくれているという実感、つまりは自分の話に耳を傾けてくれるヒトのいる所を居所とするものなのだ。
イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント 花房 陵