物流の水平展開 - 第11回 物流改革大全
物流を起点とすれば上流下流共に、産業知識や商材の慣れから販売や生産の部分的役割を担うことが可能です。更には企業間モデルの統合につながりますので、情報の一元化や企業間伝票の節減にもつながり、いっそうの物流高速化が図れるのです。
実体経済の支え役としての物流は、中小事業者など規模の経済性発揮が難しい場合には特化した産業や商材でのSCMを含めた垂直統合を求めることが範囲の経済性を獲得する手法だと述べました。
では、垂直統合から水平展開というモデルではどうでしょうか。まず初めに気づくのは、生産物流、販売物流、還流物流という一連のつながりです。同じ産業、商材での横展開が可能だと思えるのです。ただし、それぞれの物流役割を持つ企業さんとの競争であり、確執につながるので心して取り組まねばなりません。安易に価格競争を狙うとそれぞれの物流特徴や機材、マテハン、商習慣の違いから苦戦することが多いようです。
製造から販売までのサプライチェーンを一括して請け負えるような物流企業が存在するか?
という問いには答えることが難しいようです。
物流活動が生産工程に組み込まれていたり、販売部門の下部組織だった歴史を振り返れば、それぞれの物流には「似て非なる」物事があまりにも多いのです。
しかし、国内の生産量や消費量が頭打ちになることが容易に想像できる時代ですから、SCM一貫物流を目指す試みはぜひ続けて欲しい取り組みです。
製造・流通・販売業界の革命は同時進行中であり、工場のないメーカー、営業マンの居ない販売会社、在庫を持たない中間流通業者など、ECがもたらした情報革命が産業の業態事態を変えつつあります。特に製造業は産業空洞化と呼ばれるように、外地生産が本格的になりました。
流通業も外地貿易港で既に店別仕分けや内容明細書まで発行してから、貿易手続きになっている事例が増えていています。ユニクロ、無印良品などすでに生産地の中国で輸出用梱包ケースに日本の店舗名が印刷されています。
つまり、製造・流通がグローバル化することの意味は、物流のグローバル化のチャンスなのです。しかも、他業界が日本マーケットの縮小を恐れて海外に向かうのとは異なり、物流のグローバル化は日本をさらに豊かにする手助けを負っているのです。日本初海外向けというビジネスチャンスを成功させるのも物流企業の頑張りだし、逆もまたそのとおりです。
水平展開とは同じ成功を異業種、異業態、異文化へ展開することであり、日本企業が苦戦している製品・商品の価格競争とは次元が異なるのです。
日本の物流は<おもてなし>を体現したイタレリつくせりのサービスにあふれています。
外装箱に内容明細が正確に記録され、しかも店舗担当者の氏名まで書かれる行き先表示など、世界のどこにもありません。
正確無比の速度や制度は鉄道を想像するほどに的確です。
本土の物流が信用ならない、というので両手にあふれるばかりの買い物を帰国まで持ち続ける海外旅行者には、日本物流サービスが垂涎の的でしょう。
国内で十分に競争した物流企業は、その精神、コンセプトを持って海外へ展開してゆきたいものです。各国独自の物流を海外へ展開する成功事例は、ドイツポストを見れば明らかでしょう。
ドイツ発祥の郵政民営化は英国エクセル、米国DHLを抱え込んで今や世界一の規模まで成長しました。
水平展開→範囲の経済性→規模の経済性 を公式通りに実現して、強力な布陣を固めたのです。
(イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント 花房 陵)