物流不動産ニュース

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物流不動産塾▼2回目が4月18日に開催 

2008年05月01日

 物流不動産に関するスキルアップのために、イーソーコが主催となって開講している「物流不動産塾」の第2回目が4月18日、第三東運ビル8Fで行われ、約50名の聴講者で賑わった。当日、行われた講演「物件情報の進め方」(大谷真也・イーソーコ物流不動産部係長)と「鮮度命と現場百辺」(登坂雅樹・イーソーコ物流不動産部課長)の内容を抜粋した。
●物件情報の集め方
大谷真也・物流不動産部係長
(写真・大谷真也・物流不動産部係長)

 物流不動産ビジネスの基本に「売り先攻」というコンセプトがある。
 これは物件情報を数多く収集し、物件を数多く集めることを意味する。
 ここでは「売り先攻」のコンセプトをイーソーコ・グループの業務を交えながら紹介していきたい。
 ▼イーソーコ・グループの特徴
 まず当グループの現在の収益比率は不動産業(マスターリース・管理・リーシング)が55%、建設業(設計・管理・改修工事など)が38%、物流業務にあたるその他が7%と、実に物流業務外の収益が9割以上を占めている。
 物流不動産ビジネスの定義は、「物流の改善を物流施設面より提案するビジネスであり、最適な物流環境実現のため物流施設に関連する業務を、物流・不動産・建設・金融の垣根を越え、トータルに解決する物流のソリューションビジネス」、つまりは物流施設を基軸とした総合営業を行うものであるが、イーソーコ・グループでもまさに垣根を越えたビジネス提供を行ってきたところだ。
 ▼物流不動産プレイヤー
 物流不動産業界のプレイヤーとしては大きく分けて、物流業界、不動産業界、建設業界、金融業界からの参入組がいる。
 それぞれによって文化に違いがあり、たとえば金融からのファンドを活用した取り組みは、物流不動産市場に大きな影響を与えている。
 営業スタイルも各自、大きな違いがある。
 物流(倉庫・運送)の営業スタイルは、Pull型・グループ営業・固定給がキーワード。情報収集は地元回り、ヒューマンネットワークで行い、紹介・取次を活用し、物件評価は立法メートル(容積)、ヤード・床荷重・道路付などのスペック、インターチェンジ、立地で判断。メインとなる取引先は荷主・同業者となる。
 これに対し、不動産の営業スタイルはPush型・個人営業・歩合給がキーワード。情報収集は飛び込み、不動産物件情報システム・サイト、同業者・地元回り、FAX送信、検索エンジン、新聞折込、テレアポを活用し、個人営業スタイルを重視し個々の営業マンが「名刺は個人の財産」と考えているため、情報の共有化は進んでいない。物件評価は平方メートル、エアコン・照度・築年数などのスペック、駅からの距離、予算で判断。メインとなる取引先はオーナー(所有者)・同業者となる。
 これに対しイーソーコによる物流不動産営業は両者のメリットを取り入れ、営業スタイルはPull+Push型、グループ営業。情報収集は当グループが運営する日本最大の倉庫・物流不動産検索サイト「e-sohko・com」、約2万件に配信している「物流不動産News」といったITと、物流ネットワーク・ヒューマンネットワークを融合させた形で行い、パートナー企業含めた情報の共有化も図っている。また物件評価は荷物の性格をみながら平方メートル+立法メートルで判断。建物の構造的な判断、ヤード・道路付・設備などのスペック、物流立地判断、耐震基準・アスベスト診断など物流・不動産・建設面から総合的に判断し、用途に応じた改修・コンバージョンの推進もしている。
 ▼打って良し、組んで良しの総合格闘技ファイターをめざす。
 物流不動産ビジネスを取り巻く業界を総合格闘技のリングにたとえるなら、巨大マネーが動き、前清算制・短期勝負の不動産・金融出自プレイヤーは、一撃必殺・スピードが命の打撃系。これに対し積み上げ型・長期レンジの償却を考えた業務を遂行する物流業出自プレイヤーは組み技系といえる。
 そうしたなか、私たちがめざす営業スタイルは打って良し、組んで良しの総合格闘技ファイター。物流不動産ビジネスのスキルを活用することで、物流・不動産・建築・金融の各業界プレイヤーと手を組み、物件情報を集め、有効な情報を抑えることで、物件を抑える。
 物件不動産ビジネスの基本は、売り先攻。物流不動産ビジネスは物流施設を基軸とした総合営業である。
●鮮度命と現場百辺
登坂雅樹・物流不動産部課長
(写真・登坂雅樹・物流不動産部課長)

 物流不動産ビジネスにおいて「有効な物件情報」とは、どのようなものか?
 「e-sohko・com」では登録物件8000件を扱っており、当グループでも、さまざまな依頼がきているが、8割が「自社で倉庫・運営をしたい」、1割が「荷物を預けたい」、「お客をつけたい」といった要望が占める。
 そうした状況のなか、物件の種類は貸倉庫、営業倉庫、売倉庫、貸工場、売工場、駐車場、資材置場、貸地、売地、建貸など、さまざまで、物件情報を集め、有効な情報を抑えていく「売り先攻」が重要となる。
 ▼まず土地を抑えること
 ここで、まず物流不動産ビジネスに関わる一連のフローを考えていきたい。
 物流不動産ビジネスにおいては、まず「土地」を探すことからはじまり、物流的な視点・法律的な視点を交えた「評価」を行い、容積率・高さなどを加味した建築コスト・取得コスト・利回りを考慮に入れながら計画を作成し、リーシングしていく。その上でファンドを付けたり、といったスポンサー業務を行っていく。この一連の業務にはさまざまなプレイヤーが関わってくる。
 この一連の業務をみてもわかるとおり、物流不動産ビジネスにおいては、まず物流的な視点から、有効な土地を抑えることが優先。ビジネスフローにリーシングが抜けているケースが多く、この分野にも市場はあるが、ユーザーニーズに応じたリーシングを途中まで行い、ユーザー都合により、途中で解約されたときの対応を考えると、土地を抑えることが重要だといえる。
 ちなみにイーソーコグループが推進するリソーコの活用については、たとえば工場を倉庫へと再生するといった場合、ユーザーを付けてからリソーコを図るパターンと、リソーコにより収益性を上げてからユーザーを集めるパターンの2種類が存在する。
 ▼種類・条件に応じた業種・用途の分類
 さて当グル-プでは日本最大の倉庫・物流不動産検索サイト「e-sohko・com」を運営しており、物件を載せているがゆえに多数の情報が集まってくる。情報を整理し、物件情報を有効に活用している。
 施設は、たとえば業種・用途によって必要とされる条件・概要は大きく変わる。
 たとえば紙・飲料などの重量物は3トン以上の床荷重がなければならない、あるいは食品・アパレルについては高床式の施設が必要、また精密機械については空調が必要、など業種・用途に応じた施設が求められる。
 そのため、あらたな物件情報を得る際、情報入手を行い、管理していく必要がある。
 ▼鮮度命と現場百辺
 当グループではヒアリング、現場視察、賃料(平面図、断面図、配置図)で得た正確な物件情報をデータベース化。物件取得時リスト、物件概要書、それらをまとめた物件管理表を作成している。
 物件管理表では、ユーザーニーズに応じ、ランク1・専任物件(すべてお任せ)、ランク2・看板(広告看板の設置)、ランク3・アトホーム(折り込みなどでの情報開示)、ランク4・e-sohko・comでの情報提供、ランク5・会員限定ページでの情報提供、ランク6・クローズドでの対応―とランクに応じた対応を行っている。
 物流不動産ビジネスは、物件情報をいかに早く、より正確な情報として扱うかが勝負。鮮度が命で、すべてのネットワークを駆使して、他業界とうまくコラボレーションすることで、各業界のプレイヤーから信頼されることとなる。
 また現場百辺もキーワードの1つ。物件情報を正確に把握するには、日頃から数多くの物件をみることで、物流施設をみる目が培われ、物件の運用方法や用途を識別することが可能となる。正確な物件情報をスピーディに扱うことで、より効率的に物流不動産ビジネスを展開していくことが重要だ。