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イーソーコ▼RE倉庫活用と新地震保険セミナーに120名参加 

2008年09月18日

 ビンテージ倉庫(既存倉庫)の収益向上策として注目される、施設バリューアップ手法(RE・倉庫)の紹介と、大地震に対する修繕、建て替え費用、賃貸収入リスク対策をテーマに置いた、「収益拡大と地震リスク対策」セミナー(主催・イーソーコ総合研究所)が9月9日、八重洲富士屋ホテル・櫻の間で開催され、約120名の参加者で賑わった。
 同セミナーでは、まず1部でRE倉庫手法について、イーソーコグループから解説。2部において、イーソーコ、シー・アイ・エス・ホールディング(CIS)の協業プランで、このほど開始された、新地震保険サービスが紹介された。
 ここでは、当日のセミナー概要と新「地震保険」の内容について、リサーチした。
          ※
 まず当日のセミナー概要に移る前に、イーソーコ、CISが協業で事業を行っている、新地震保険の内容について解説しておく。
 従来の地震保険は、加入が複雑。条件として、新耐震基準(昭和56年制定)をクリアしていることはもちろんのこと、新耐震以降に建設された施設においても加入が複雑で、そこで得られるメリットは少なかった。新耐震前に建設されたビンテージ倉庫を、改修によって新耐震基準に合致させた場合については、さらに地震保険に入ることが困難。そのためバリューアップ手法(RE・倉庫)で、改修した物件については、保険加入が課題となっていた。
 こうした状況を変えるべく「RE・倉庫」事業で培った耐震診断・改修ノウハウを持つイーソーコグループと、きめ細かい地震リスク対策のノウハウを持つシー・アイ・エス・ホールディングの2社は合意。イーソーコグループが耐震診断・耐震補強を行い、新耐震基準に適格となった改修施設に対し、シー・アイ・エス・ホールディングが地震保険の設計・手配を図っていくビジネスを展開。改修物件の保険加入への途を開いた。
 シー・アイ・エス・ホールディングが提供する地震リスクにフォ-カスした保険は、建物・機械設備等の財物損害に対する補償にとどまらず、地震による休業によって受ける収益減少等の損害までを合わせて補償する独自の内容で、ユーザーにとって大きなメリットのある保険となっている。
●発想の転換で大きな収益向上に!RE・倉庫活用でビジネスを躍進せよ
 当日のセミナーは、こうした両社協業によるあたらしい地震保険事業が披露。ほかにビンテージ倉庫をバリューアップさせる、RE・倉庫が紹介され、建物の価値と信頼性を向上させる策が伝授された。
 まず第1部の最新!物流施設のバリューアップ手法「なぜ今、RE倉庫か」では、イーソーコの大谷巌一・副社長と、イーソーコ総合研究所の平澤賢一・エンジニアリング部部長より、RE・倉庫の有用性が次のように語られた。
○物流不動産の現状と今後の展開
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<写真・イーソーコ・大谷巌一・副社長>
 物流施設ニーズは、大量製品への対応(産業インフラのニーズ)を受けた保管型から、13、14年前より、多品種少量生産への対応(消費インフラのニーズ)を受けた通過型・流通型へと移行し、さらに7、8年前より、金融インフラのニーズを受け、証券化の動きが活発化した。
 ここ10年間の物流施設環境は大きく激変しているが、これからは社会のインフラのニーズを受けて、持続可能型(サスティナブル)社会の実現へ対応した施設、具体的には環境負荷の低減を図り、できるだけ長期間使える施設(200年倉庫)への転換が図られるとみられている。
 そうした流れのなかで、3PL・SCM・エコ対応・CRE・BCPに順応した高度化施設を建設することによって持続可能化を図ったり、既存ビンテージ倉庫をスクラップアンドビルドするのではなく、RE・倉庫し、事務所やスタジオ、あるいは需要の多い三温度帯倉庫へと転換することで収益構造をあげていく手法が今後、ますます活発化していくだろう。
 さて現在、物流不動産ファンドを活用したMegaセンターが大量供給されることによって、複数の中規模(保管型)マザー物流センターを大規模(通過型)物流センターへ集約化し、物流効率化・コストダウンを図ることが中小物流企業においても容易になってきている。
 一方で自社倉庫を持つ物流業者にとってみれば、Megaセンターを活用して集約化を図ったとしても、自社倉庫が空くことになり、収益は減少してしまうとの不安から、これまでMegaセンターを積極的に活用することはできなかった。ところが空いた自社倉庫をRE・倉庫し、高い収益のあげられる施設へと転用すれば、全体の収益は大幅に増加し、ビジネスチャンスが生じる。公表されていないが、現実に収益を大きく伸ばしている物流業者の多くは、Megaセンターと、RE・倉庫を併用した取組みをしている。こうした取組みの差が、今後の勝ち負けを大きく左右するといっても過言ではない。
 RE・倉庫手法のなかでは、さらに今後、耐震化を図ることで建物価値を上げ、有利な立場に立ち、荷主企業のBCP戦略に応じて、耐震保険加入を検討していく。そうした試みが行われていくことだろう。
○RE・倉庫について
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<写真・イーソーコ総研・平澤賢一・エンジニアリング部部長>
 RE・倉庫事業をはじめるに思い当たった原点は2つ。
 まず1つは以前、務めていた設計事務所時代に、たまたま観ていたテレビ番組。
 そこでは「田舎の憂鬱」をテーマに、居住域では過疎化、高齢化、福祉施設不足が取り沙汰され、行政の予算に限界があるということ、また生産域では農業倉庫の空き、開発問題がクローズアップされていた。そこで思ったことは、空いた農業倉庫の構造体を利用して、福祉施設に転用することができるのではないか、というマイナスのかけ算の発想だった。
 空いている農業倉庫を一度、スケルトン化し、構造補強(新耐震基準クリア)していく。倉庫の大きな天井高を利用し、床を追加すれば、ローコストで福祉施設が完成するのではないか。実際に取り組みを行ったわけではないが、この発想がRE・倉庫事業立上げにつながることとなった。
 もう1つは神戸に建てられた神学校があげられる。
 ここでは仲間が設計にあたったのだが、施主の要望として、①とにかくローコスト、②メンテは極力しない(基本はしない)、③90年以上の寿命をもたせる、④改修を睨んでの自由な空間―があり、これを満たすために、LCOという手法に基づき、シンプルで安価に建設が図られた。
この話を聞いて思ったのが、こうした空間は「倉庫」に近いということだった。倉庫を活用すれば、施主が望んだ形で最適なものが提供できるのでは、と。
 RE・倉庫は空いている倉庫があって、さらに相手側からの要望があって、お見合いビジネスに似た要素があり、両者のマッチングが図られないと実現できない要素はあるのだが、倉庫が持つ構造体は、相手側からのさまざまな要望に応えられる柔軟性を持ち、建物自体の収益向上に大きく貢献する。
 これまでクリエイティブオフィスやダンススタジオ、スタジオなどの転用に携わってきたわけだが、RE・倉庫に適した施設としては、スポーツ施設、スタジオ、物販・飲食・アミューズメント施設、学校などの教育施設、マルチユースビル・テクニカルセンター、消防署などの庁舎、クリニックモールなどの複合医療施設、福祉施設、災害時の仮設住宅・緊急避難施設、美術館・博物館、倉庫(文書保管倉庫や冷凍・冷蔵施設など)などがある。
 収益向上策としてぜひ検討してほしい。
●地震リスクからの企業防衛戦略のノウハウをすべて公開
 続いて行われた第2部では、物流施設オーナー待望の新「キャッシュフロー地震対策」として、日本における地震保険の第一人者であり、イーソーコの協業パートナーとなる、シー・アイ・エス・ホールディングの森島知文社長より、新地震保険が紹介された。
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<写真・CIS・森島知文社長>
 日本各地で毎年のように発生する大地震。とくに中越地震発生後には、多くの企業経営者から「地震大国の日本において事業を営む以上は、その地震による危機管理対策は避けてとおれない課題である」との声が高まっている。政府側も、そうした対策の1つとして「BCP「事業継続計画」」の策定を企業各社に薦めている。BCP構築で政府が訴えていることは「万が一大地震が発生し、製造業においては工場の操業停止、倉庫業者においては、建物の倒壊により事業が中断し、倉庫料の減少が長期化した影響から売上が激減して、直接損害である建物や設備を修繕する費用ばかりではなく、固定費などの出費は毎月継続発生することを再度認識する必要がある。地震による事業中断が長期化した場合、最悪、倒産にいたってしまうが、その前に事前に対策を行い、計画する必要がある」ということだ。
 現在、民間企業では、こうした最悪な結末を防ぐべく、さまざまな策を講じており、物理的な手法として「建物の耐震補強」「BCP「事業継続計画」」が注目されている。しかし、それだけでは不十分。たとえばBCPを策定しても、実際、地震災害が起きたときには、事業を継続するための資金不足から机上の論理でとどまってしまう。
 CIS、イーソーコはそれらの企業ニーズに鑑み、地震災害による財物損害の補償だけではなく、災害による操業停止に伴う、利益の減少から事業継続するための資金の確保(キャッシュフロー対策)を補償する「地震保険」を開発した。この保険は荷主からの受託物(冷蔵・冷凍商品を除く)についても、特別にこの地震保険の補償の対象とできる場合もある優れものの保険だ。
 さて震災害発生における倉庫オーナーの事業中断リスクとしては、倉庫建物の損壊により、①物件使用不能、提供責任を果たせない、顧客の流出、②売上の低下、修繕費用支出の増加、キャッシュフローの増加、③金融機関などの信用価値の低下、④資金調達、M&Aリスクの増大、事業再開困難、物件の売却―と悪影響が連鎖することにより、ダメージが増大してしまう。
 これを防ぐために、まず免震・制震・耐震補強を図り、地震リスクを低減することが大切だ。ここで得られる地震リスクの低減は、地震保険の保険料を安く設定することにつながるので、間接的なメリットも大きい。
その上で地震発生後の「財物と離籍の損害」の分析を図る。
 ここでの地震リスク・ファイナンスにあたっては資金繰りを重視。資金需要の予測(被災時の損失予測だけでなく固定支出、決済資金の予測が必要)を行い、資金調達の準備(緊急借り入れ枠の確保、地震財物損害、地震利益損害保険の付保)を行っていく。
資金調達の準備を緊急災害融資、自己負担で賄うのは困難。そこで地震保険の活用を行っていく。すべての施設を保険に入れるのが難しいケースはあるだろうが、その場合、重要物保管類のみに適用していく。保険と緊急災害融資と自己負担額の組合せこそが、最適な企業リスク・ファイナンス戦略といえる。
 最後に事例として2つをあげたい。
 1つは、94年のカルフォルニア地震のケース。
カルフォルニア地区にバドワイザーの工場があったが、88~93年にかけて耐震補強(約16億円)をしていたため、被害者はゼロ、総被害額も30億円にとどまり、4日後には業務再開、7日後にはフル操業となった。耐震補強をしていたことで、財務は200億円の被害を防止し、業務中断による被害300億円の被害をなくすこととなった。
 もう1つはそれとは逆のケース。2004年の中越地震によって三洋電機子会社は、地震の被害により870億円の損失があり、赤字転落へ。耐震補強もされておらず、半導体業界の常識に反し、地震保険に加入していなかったことがクローズアップされ、信頼は失墜し、地震だけの影響だけにとどまらず、子会社のみならず本体の経営も脅かすこととなった。経営者のリスクマネジメントとして、耐震補強と地震保険はどれだけ重要かの教訓として、みなさんにはぜひ認識してもらいたい。