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再生可能エネルギー▼60%以上が「投資計画に影響」 

2012年07月19日

 【輸送経済(http://www.yuso.co.jp)】
 1日始まった太陽光など再生可能エネルギーの買い取り制度に、物流事業者も高い関心を持っていることが、本紙アンケートで分かった。60%以上の事業者が「今回の制度が再生可能エネの導入計画に影響を与える」と答え、再生可能エネを利用する機運は高まっている。一方、普及の鍵を握るのが買い取り価格の安定性。高額な初期投資費用などの課題も残り、導入環境の整備も必要となる。
 今回の制度は再生可能エネで発電した電気を一定期間、一定の価格で電気事業者が買い取る仕組み。対象となるのは(1)太陽光(2)風力(3)地熱(4)水力(5)バイオマス――で、買い取り価格や期間はそれぞれ異なる。
 電力10キロワット以上の太陽光発電の場合、買い取り価格は1キロワット時当たり42円で、調達期間は20年。10キロワット未満では調達期間が10年となる。5つのエネルギーの価格は、太陽光パネルの設置状況など動向を見て、毎年見直す。
政府も並々ならぬ力入れる
 東京電力福島第1原発の事故を機にエネルギー政策の抜本的な見直しが求められる中、今回の制度はその中核を担う。
 昨年12月、政府のエネルギー・環境会議は再生可能エネの発電コストを試算したが、今回の買い取り価格はそれよりも高めに設定。並々ならぬ力の入れようだ。
 再生可能エネをめぐっては、すでに自動車や電機メーカー、コンビニなど多くの業界が導入に向け準備を開始。物流センターなどで多くの電気を使う物流事業者も、今回の制度に強い関心を示している。
売電拡大、相乗効果に期待
 物流事業者に買い取り制度の認知度を聞いたところ、85%が「内容をよく知っている」「少し知っている」と回答。今回の制度が今後の施設整備に影響を与えるかについては、「影響を与える」「ある程度与える」が63%。「影響を与えない」などの19%を上回った。
 事業者が制度を前向きに捉える理由の1つが、再生可能エネの売電措置の拡大。「価格が事前の予想より高い水準で決まった」(丸全昭和運輸)。「売電による投資の回収が見込める」(SBSホールディングス)。
 これまで太陽光発電などは環境負荷低減を目的に設置。今後売電により投資コスト回収が見込める点を、事業者は好意的に受け止めている。
 「売電価格の上昇で事業として捉える企業が増える」(大手倉庫)、「企業の売電事業への参入が増加する」(東京・中堅)など、他業界の取り組みが拡大することで、再生可能エネを導入しやすい環境が整うことへの期待感もある。
導入促進には前向き 価格安定 普及の鍵に
 ただ、今回の制度が物流事業者の再生可能エネを利用する取り組みの拡大に直結するわけではない。売電価格水準の維持など、今後の制度へ不安を口にする事業者がいるのも事実だ。
 買い取り価格は、資源エネルギー庁が「事業者に太陽光などの導入を促すため」高めに設定。再生可能エネを買い取る財源には、電気料金に上乗せされる賦課金が充てられる。参入事業者が増えれば毎年の見直しで、売電価格が下がる可能性もある。
 事業者からは「新規事業として参入するには安定した長期にわたる買い取りの継続が前提条件」(中部・大手)、「安定した買い取り価格が継続しないと収支計画すら立てられない」(九州・中堅)といった声が。価格がどこまで安定するかが大きな鍵を握る。
 高額な初期投資費用や補助金制度、太陽光パネルの性能向上といった周辺環境の整備もポイント。
補助金拡大は必須条件
 アンケートでは、59%の事業者が太陽光発電などの設備を導入していない。理由として「費用対効果が見込めない」「初期投資の負担が大きい」などの答えが多数。補助金の拡充や税制優遇などを求める声も強い。
 国や自治体は補助金を設けているが、十分とは言えない状態。事業者の中には、導入しようとする自治体で、補助金制度がなかったというケースも出ている。
導入環境、いかに整えるか
 再生可能エネをめぐっては多くの課題が残るが、前向きな声も。「国内外で建設予定の施設は必要に応じて太陽光パネル設置などを検討する」(日本通運)。「企業の社会的責任として今後も導入推進を継続」(鴻池運輸)。
 67%の回答者が「(太陽光発電などの)導入を検討する」とし、物流事業者も再生可能エネの必要性は理解する。新制度を機に国内のエネルギー自給率が向上するかは、買い取り価格の安定や周辺環境の整備にかかっている。
 今回の調査は物流事業者を対象に、5月28日~6月25日まで実施。27社から回答。(小林 孝博)