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【緊急提言】太陽光発電が物流NEW BIZになる 花房陵 

2012年07月19日

イーソーコ総合研究所、主席コンサルタント 花房陵
 EUの失敗を顧みずに始まった、固定価格買取制度(FIT)
 人口増加は衣食住産業の条件だ。個人所得の増加が家電・自動車とレジャー産業の契機となる。東日本大震災の復興は公共投資となって、土木・建設・道路・鉄鋼・不動産業界が沸騰する。原発事故が電力事業の総崩れにつながり、行き詰まり感が漂っている。景気は条件がないと発展しない。高齢化は医療介護に追い風だが、人口減と給与の低迷は何を生むか。再生日本戦略に停滞の20年を新事業で切り拓こうとしている。太陽光発電事業の実務に当たっての課題、採算を紹介する。
1.再生可能エネルギーの固定買取制度(FIT:Feed-In Tariff)とは
 経済産業省資源エネルギー庁はエネルギー自給化とクリーンエネルギー導入促進のために、『再生可能エネルギーの固定買取制度』平成24年度版を公開した。7月1日から施行されたものだが、個人住宅や民間事業者によって行われる発電事業を促進するため、個人では余剰電力、民間では発電電力の全量買取価格を電源別に定めた。再生可能エネルギーとは、太陽光、風力、中小水力、地熱、バイオマス火力発電の事を言う。
 話題を集めてるのは、太陽光発電の買い取り価格を1キロワット時当たり42円と定めたことにある。買取金額は固定でしかも20年間の契約になる。買取先は東京電力などの一般電力事業者に義務づけて、その費用は広く国民に電気料のサーチャージ追加料金として負担させることになる。
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2.FITで新規事業者はどれだけ増えるか
 EUスペインやドイツで20世紀末から始まった再生可能エネルギー買取制度は、特に太陽光パネル事業者に千載一遇となりバブルの様相を呈していた。そのせいもありすでに下火、太陽光パネルのトップメーカーだったQセルズは2007年に世界シェアナンバーワンから一気に破綻。後発の中国メーカーに破れたのである。日本メーカーもご同様でシェアの形もない。
 家庭用電気料は1キロワット当たり25円程度、法人の自由契約でも17円程度で国際価格の倍以上の料金だが、これを家庭や民間の太陽光発電事業によって42円で買い上げるというインセンティブ。
 現在の太陽光パネル単価は下がりつつあるが、家庭用で47万円/KW、事業用で33万円/KWという市況から試算した料金が42円であって、この価格では事業者にとって、十分に採算と収益が上がる計算になっている。
 経済産業省はFIT導入によって買取電力を50億KWと予測し、投資規模を総額1兆450億円と見込んでいる。新しいマーケットが拡大を始めたのだ。
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 再生可能エネルギー発電事業は太陽光に限ったわけではないが、事業の容易さは格段だ。風力や地熱は騒音やボーリングなどのアセスメント調査が必要だし、その他は設備、建設工事に期間が掛かる。バイオマスは燃料の安定調達が容易ではない。太陽光パネル発電は建設も機材の設置だけであり、用地や屋根の確保ができれば、既存の送電線を利用してすぐさま売電ビジネスが始められる。集合住宅の屋根だけを借りるモデルも想定している。いずれも電力会社までの送電線工事が必要だが、特異な地域でなければ電柱番号で照会が可能だ。
 太陽光は稼働率も昼間のわずか1000時間といった低効率であるが、分散型電力自給化を目指して高速促進が図られている。キロワット単価42円は次の試算表の通りに、事業ベースでは年率6~8%の投資回収が可能になる。
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 100坪の設置面積で50KWの太陽光パネルが設置できる。重量も1500Kg程度。投資額は1600万円で回収まで10年、その後最終利回りは8%となる試算だ。
 経済政策でビジネスモデルを提示して、しかも助成や減税ではなく国民に負担を求めるという点では、国は1円も出さずに事業者に利益をもたらす、初めてのものだ。KW単位での設備投資33万円は中国製実勢価格の20万円台からするとはるかに高めに設定してあり、実態としては回収まで7~8年、実勢利回りは10%付近まで高まる可能性が十分にある。
3.エネルギーバブルは企業と雇用をうるおすことになるか
 1兆円のマーケットは様々な業界で取り組むことができる。太陽光パネル(PV)は海外から続々と低価格の製品が導入され、施工工事や保守も工務店レベルの技術で新規参入が続いている。工事業界には千載一遇のチャンスが訪れた。 
発電事業は要員が不要だ。管理も保守も委託によってまかなえるし、事業計画から本格的売電開始まで1年と掛からない。投資案件として銀行、ファンドも注目している。新規事業としては格段の容易さであり、しかも投資回収を政策によって保証された初めてのビジネスモデルと言える。数年後にはバブルとも言えるピークを迎えるだろうし、スペインやドイツと同じような社会問題となることも必死だ。結論からしてみれば、再生可能エネルギーによる電力比率は10%まで届くはずもなく、次期エネルギーの新原子力かシュールガス発電が主力となることは間違いない。20年間の期限限定ビジネスモデルと言える。
 
4.国家主導の経済政策の危うさ
 原発事故に関係してこの夏の電力事情が厳しい。各社は節電対策に追われ、万一の計画停電が予想されるならと生産拠点の移動まで検討している。物流活動も多大なエネルギー源を必要としており、国家の課題は業界の問題として受け止めなければならない。FITはエネルギー自給化政策の一環として、さらには再生日本の新成長戦略としてのエネルギー産業の活性化策である。しかし薄く広く国民の負担を求めて、集めた金を特定事業者に注ぎ込むという新手の政策は、税金を元にした公共投資やエコカー補助、家電エコポイントなどに類似している。一時の活況は期待できても、継続安定性の問題が疑問視されている。特にEUでの政策が完全に失敗した証明があるし、注力している太陽光発電は稼働率も低く、蓄電池との併設がなければ電力の分散安定供給にもならない、いわば役立たずな方式だ。日本での有力な発電事業は、国立公園内の風力と地熱発電、数多い島々での海上風力が本当の期待を集めている。
 42円20年間の固定買取制度は、国が初めて示したビジネスモデルだ。バブルが終われば、価格も期間も短縮されるに違いない。しかし、投資家や事業化にとって20年間という、設備減価償却を越える事業は魅力的であるし、その後は収益を確定させて撤退でも構わないだろう。
 そのように割り切れば、早い者勝ちの事業スタートが優位だし、環境配慮とか温室ガス低減などという大義名分ではなく、れっきとしたドライなビジネスとして先行有利、後発不安なネットワーク商法とも見て取れる。
 政策としての評価は、新たな電気料としての国民負担増加となって、賛否騒然となるのは当然であり、超長期の安定事業とはなり得ない。
 このビジネスモデルに乗るも正解、乗らぬも正義として正解、傍観するは負担を強いられるだけの結果となることを知っておいて欲しい。
ローソン、レンゴー、センコン物流、三井化学、丸一鋼管、ハザマ、ミサワホーム、リゾートトラストなどの上場企業は早々と定款変更を済ませ、プランニングをスタートしている。
※倉庫屋根や遊休土地に太陽光パネルを設置する売電事業は、ファイナンス、投資回収並びに設置工事設計を(株)イーソーコ総合研究所がご紹介します。詳しくはお問い合わせ下さい。