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3PLからLLPへ▼メーカー物流受託に変化、「包括請け負い」進むか 

2013年05月02日

 【輸送経済(http://www.yuso.co.jp)】
 メーカーからの物流のアウトソースが進む中、物流事業者が担う業務範囲が、今後さらに広がる可能性がある。従来の3PL(サードパーティー・ロジスティクス)に加え、物流の企画立案・計画策定まで包括して請け負うサービスへのニーズが高まりつつある。
   
 独物流企業大手DHLグループで保管・配送事業などを手掛けるDHLサプライチェーン(本社・東京、河村修一社長)は先月、コニカミノルタホールディングスの物流を包括して引き受ける「LLP(リード・ロジスティクス・プロバイダー)」の契約を結んだ。
事業者には関係強化の利点
 LLPは従来3PLが担ってきた物流の管理・運営に加え、企画立案・計画策定も含め、一貫して物流を担う業態。DHLの「日本国内での受託は初めて」(河村社長)で、LLPによるマネジメント強化、貨物領域ごとのプラットホーム(共同物流インフラ)整備を主要戦略に掲げる。
 「物流企画力の抜本的改善、物流最適化、コストダウンが見込めると判断した」(コニカミノルタ)。メーカーとして製品開発・製造に注力し、物流はノウハウを持つ専門事業者に委託。コニカミノルタの物流設備、人員、提携企業との契約も全てDHLが引き継ぐ。今回の対象は国内物流だが、海外についても検討の視野に入れていく。
 LLPは物流を包括的に取り込むため、事業者にとっては荷主との関係をより強固なものにできるメリットがある。
 「従来型の3PLは、既存の仕組みの中で部分ごとに各事業者がオペレーションを担うレベルにとどまりがち。LLPとなれば、顧客とがっちり手を組める」(キユーソー流通システム)。
「ニーズ増は時代の流れ」
 LLPという言葉は国内ではあまり知られていない。だが、同様の取り組みは、すでに大手物流事業者を中心に行われてきた。
 「3PLから一歩進んだ形での取り組みについて、顧客側から相談を受けることはある」(ニチレイロジグループ本社)。
 物流機能の完全移管は、「特に不況時、メーカーなどから物流部門・子会社を人材、センターごと引き受けてほしいとの要望が増え、受け入れたケースがある」(ハマキョウレックス)といった事例も。
 「(LLPは)時代の流れとして欠かせない。メーカーにとっては、経営改革の一環としての物流の見直すケースも。その意味で、物流業者は顧客、エンドユーザーに加え、株主も含むステークホルダーの利益に貢献できる提案を求められるようになった」(日本梱包運輸倉庫)。
受注事業者の体制に課題も
 一方で、提案力、資本力、受け皿を考えると、受注する側にはある程度の規模が必要になる。「荷主から『全ての物流設計までやってほしい』との話は来るが、実際にやる場合、拠点配置、人員調整、システム構築が不可欠。(当社のキャパシティでは)実現はまだ先」(関東の中堅事業者)。
 「予測と異なる状況が起きる場合の責任も考えると、完全に物流を引き受けるのは難しい」(関西の事業者)といった意見も聞かれた。
 また、物流戦略が事業の核となる荷主では、LLPへの需要はないと考えられる。トヨタ自動車は「物流は(生産の)〝要〟。自社から切り離すことはない」と明言。出店戦略と物流戦略が密接に絡む大手コンビニやスーパーなども同様だ。「物流戦略やコントロール機能は社内で持っていたい意向が強い荷主も多い」(関西の事業者)。
 とはいえ、多くのメーカーでは製造など「コア業務」への集中傾向はますます強まっている。この中で、事業者に求められる範囲がより深化するLLPに、今後ニーズが増す可能性がある。事業者の「物流提案力」が一層重要性を持つことになりそうだ。(村山 みのり)