物流不動産ニュース

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デフレに強い安定商品▼物流不動産 10年で急成長 

2014年09月17日

輸送経済新聞社
 物流不動産とは、資金を投資家から集め、大規模な物流施設を建設。入居する企業からの賃料収入を配当や初期の借り入れの返済に充てる事業形態だ。10年 ほど前から急速に広まってきた。物流事業者の旺盛な需要に後押しされ,空室率も首都圏では2%前後と堅調に推移。各社の物流不動産事業は順調に拡大してい る。      

 物流不動産事業が発展した背景にあるのは「安定した金融商品だから」とロジスティクス関係の調査・研究を多く手掛ける、辻俊昭日本ロジスティクスフィールド総合研究所社長。デフレ下でも安定して稼働する物流施設は「不況下に投資が集まりやすかった」(辻社長)。
 さらに首都圏にある物流施設の25%が築40年以上たっており建て替えの時期に来ていること、拠点集約、3PL(サードパーティー・ロジスティクス)事 業の拡大や通販業界の成長といった物流施設の需要増加が追い風になり、各地で複数顧客が入居するマルチテナント型の建設が続いている。

増えるのはマルチテナント

 マルチテナント型が多く建築されるのは、不動産事業者主体で建設を進められ、計画的な土地確保ができるため。「調査の結果、需要が高い土地に10万平方メートル以上の大型の施設を建設」(辻社長)し、入居者を募る。
 マルチテント型は、入居者が決まっていないことや5年ほどの短期契約が多いことなど本来は高リスク。しかし平成22年からは前述の理由で供給よりも需要が上回る状態が続いており旺盛な需要が物流不動産事業を後押ししている。
 一方で、顧客のニーズに合わせて土地の取得や施設建設をするBTS(ビルド・トゥー・スーツ)型は、15年前後の長期契約が中心。使用する物流事業者は 用途や目的にかなった施設、立地を選択できるのが利点。「3PL事業の拡大などで競争が激しくなり、自社施設を持つことがリスクになる場合もある」(辻社 長)ことから自社施設を持ちたくない事業者の需要を見込む。

需要高く賃料高水準で推移

 「街中など好立地にある物件の空室率は2~3%」(同)。好立地の物件は引き合いも強く賃料が高い。そこで不動産事業者は都心から離れてはいる が、貨物の集積に便利な埼玉県川島町など圏央道周辺の立地に比較的賃料の安い物件を投入。同時に都心にも近く利便性の高い市川・船橋・川崎といった湾岸地 区にも施設を展開。東京近郊に集積地を確保したいというニーズに応える。
 今後の賃料の見通しは「需要増と建設コストの高騰に押され、しばらくは高い価格で推移」(同)する可能性が高い。しかし27年には参入事業者拡大の影響もあり「物流施設が大量供給される見込み」(同)で、以降は「需給のバランスで決まる。安くなる可能性もある」(同)。
 国内不動産事業者も参入し次々と施設建設が進む物流不動産事業。物流事業者にとって「拠点は自社で。その他は賃貸といった使い分けができる」(同)などのメリットがあり、今後も「安定成長できる事業」(同)として堅調な事業展開が続く。(佐藤 周)