物流不動産ニュース

物流、物流不動産、倉庫を網羅した
最新ニュース・情報を発信しています。

  • メール会員情報変更
  • メールマガジンバックナンバー
  • ニュースメール配信登録

倉庫遺産No.0001 「エレベーター操作盤のクリップ」  コラム - 108 

後世に残したい、というほどではなくても忘れられてしまうのは寂しいなと思うような倉庫内のあれこれを、勝手に「倉庫遺産」と名付けました。日々の取材や業務のなかで見つけたそんなあれこれを、写真とともにお伝えしていきます。当コラム欄で不定期に掲載していく予定です。 残らなくてもいいんです。せめて記憶の片隅に置いておきましょう、というスタンスでやっていこうと思います。

倉庫遺産0001

とある倉庫のエレベーターの操作盤です。長年にわたって荷物を上げ、また下ろしてきました。 ボタンの配置やデザインがなんともビジネスライクというか、マンションやビルの操作盤のような色気が全くありません。必要なのは確実性のみ。乗用車の運転席というより、バスや電車の運転席など男の仕事場といった雰囲気を感じさせます。

よく見ると照明スイッチの下にオレンジ色のクリップがついていますが、ここに伝票を挟んでおけばエレベーター内の荷物の詳細がわかるというわけです。ビスによってしっかり取り付けられており、預かった伝票は絶対に落とさないという強い意志を感じさせます。オレンジに塗られているのは、伝票を見落とさないようにという配慮かもしれません。長年にわたって庫内を切り回す人の手が触れてきたその表面はところどころ塗装が落ち、特に親指が触れる出っ張りは完全に剥げて鉄の地がでています。地上階のトラックバースから荷物がエレベーターに乗せられると、上階の主任がその卸下を支持しつつ片手で伝票を抜き取り素早く内容を確認する。そんな光景が目に浮かびます。

伝票と荷物が常に一緒に移動するというのは当たり前の光景ですが、それもデジタル化によって変わりつつあります。このクリップも最近は使われてないそうですが、その存在はむしろ、ミスを防ぐというプロ意識の象徴と化しているといっていいのではないでしょうか。現場の人はそんなこと感じていないのかもしれませんけれども。

(久保純一)2015.04.05