長期成功の視点 objectー第26回  物流不動産Bizの人材開発
「誰も学んだと答えないのに、教えたと言えるのか」、指導や教育に携わるものとして自戒しなければならない。教育や育成の成果はすぐさま現れるものではなく、学業の成績とは別物である。
しかし、学びし者は内省からの行動に変化が生まれてくるものだ。知識と技術を身につければ、言動や立ち居振る舞いにも重みが出てくるであろう。何より業務や日常の姿勢が周りに及ぶものである。いわば、人のために学び、習熟して、人のために尽くすように変わるのが、教育成果と言える。
企業活動はすべて外部への働きかけによって、収益が生まれるものであり、内にあっては何ものも生み出すことはなく、経費だけが消費されてゆく。蓄積は続かず、循環こそが企業活動を表している。優れた人材も教育の目的もすべて外部に向けられるものであり、学びはより強い高度な奉仕につながるものだ。
ビジネスの真価は、顧客との接点にあり、それを言い表すのが「真実の瞬間」である。商談であれ、挨拶であれ、外部との接点にしかビジネスはない。そのために学び、学ぶものを育成するのが教育と指導の目的なのだ。
言い古されてきた顧客満足は、真実の瞬間に判定が下される。どのような営業活動も<あなたから買いたい>と言わしめるまで、成功したとは言えない。さりとて、失注を繰り返したとしても、いつかは成功を約束されるものではない。
人のために働くとは、滅私奉公でも無制限の貢献でもない。卒啄同時と言うように、タイミングと双方の利害が一致することが重要なのだ。いわば、自分の不都合と相手の不都合を突き合わせ、しかも最適な解をねじりだすことが商談であり、提案を承諾させる技なのだ。
- 自社の不都合とは何か
- 顧客の不都合はどこにあるのか
- すり合わせ、協調、妥協によって、不都合は解消できるか
- 譲歩や勝負で商談を進めるなら、長期の成功にはならない
物流サービスも不動産提案も中長期の取引となり、そこには信頼の継続が欠かせない。いっときの利害を解決するなら、いつかは紛争に発展する。長期的な商談の成果を求めるなら、相手のために尽くしている姿を示す必要があり、それは謙譲の美徳として古来の日本に残る商法なのだ。
イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント 花房 陵