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偽装請負で国の施策強化▼労組からの摘発の動きも 

2008年03月02日

 昨年6月、厚生労働省が製造業向けに策定した「製造業の請負事業の雇用管理の改善及び適正化の促進に取り組む請負事業主及び発注者が講ずべき措置に関するガイドライン」が各界に波紋を呼んでいる。
 派遣業務については、「労働者派遣法」にて、詳細な定義がなされているものの、請負の明確な定義はこれまでなされてこなかった。
 それがこのガイドラインについては、発注者と請負事業主が協力して改善・適正化すべき項目として、こと細かく提示。請負事業主側に、事業者責任者のほかに、各工程管理の責任者の責任を求めたこと、雇用管理の改善について、キャリアパス(仕事の経験を積みながら、ステップアップを図れるようになっているか)などの明示を謳うなど、踏み込んだ形となった。
 国側が、そこまで踏み込んだガイドラインを出すとみられていなかっただけに、メーカーや請負事業者側からは驚きの声があがるとともに、人材派遣・請負事業にかかわる改善強化の姿勢が明確となった。
 製造業向けに出されたガイドラインであるが、これは物流業務に置き換えることができる。
 「入出庫・棚卸業務にいたる各工程の管理責任者は置いているのか」、あるいは「使い捨てではなく、(きちんとした教育訓練の場を設け)キャリアを向上できる体制となっているか」など。
 実際、厚生労働省側の担当官も「このガイドラインで謳っている内容は、当然のことながら物流業務にも適用されること」と述べる。
 国側の人材派遣・業務請負のコンプライアンス強化の動きは、大手物流業者の二重派遣で幕を閉じたわけではない。これから本格化するといえるのだ。
 こうした上からの圧力とともに、実際に働く作業スタッフからの目も厳しくなっている。
 派遣労働者で構成されるある労働組合では、コンプライアンス違反をしている企業を摘発するためにスタッフを送り込んでいる。その標的業種の1つとして、物流業界もあげられているという。
 安全衛生管理、労働基準法、請負・派遣に関わるコンプライアンスの取り組みは、これまでのようになおざりにはできない環境になってきていることは間違いない。
<コンプライアンス向上と物流業界の発展に向け、日本物流アウトソーサー実務教育協会の役割高まる>
 こうしたコンプライアンスに対するチェックが厳しくなるなか、物流業界のコンプライアンス向上に向けた取組みを行っている団体がある。
 昨年1月、設立したのが「日本物流アウトソーサー実務教育協会」(鈴木英男・代表理事)がそれ。同協会では、①業界に蔓延する偽装請負の撲滅、②格差社会是正のために、川下に位置する作業員がステップアップできる―環境づくりをめざし、作業員側には資格取得支援活動を実施。荷主・物流業者側には、コンプライアンス向上、人材教育を含めた支援を行っている。コンプライアンス重視の傾向が強まる中、同協会に相談を持ちかけるケースも多くでており、現在50社近い企業が同協会からのコンサルタントや教育・指導を受けている状況だ。
 これまでの物流業界は、コストを可視化せず、物流丸投げで、安さばかりを追求する。受ける側もコンプライアンスに関わるコストをなおざりにコスト競争に走り、受託する。「真の物流改善」の取り組みをしないまま、こうしたコスト削減手法を「物流効率」と呼び、推進していった風潮があった。その結果、もっとも犠牲となった、川下にいる作業員は法に違反する雇用形態で雇われる形となった。適正価格を下回る受託の無理が、派遣企業からのデータ装備費の名目での賃金天引き、保険未加入-といった問題を生み出している。
 「その意味では、コンプライアンス強化の社会情勢は、これまで歪だった業界を是正する、いいきっかけ。いま問われているのは、物流業務の可視化とともに、安全衛生に必要なコスト、コンプライアンスコスト(労働基準法、労働者派遣法など人材に関わる法といった、コンプラインスに必要なコスト)の可視化。ガラス張りのもとに、必要な経費を計上し、適正なコストで発注しているのか、あるいは受託しているのかが、問われる。荷主、物流業者、派遣・請負業者が、きちんとフィルターを持って、駄目な企業を排除し、作業員の環境を向上させていく。川下の作業員から工程管理者、物流センター長とステップアップできる教育制度を充実させる。目先のコスト競争ではなく、こうした取り組みが、物流業界の発展につながるはずだ」(日本物流アウトソーサー実務教育協会・三浦弘人専務理事=セル・ホールディングス・グループ代表※2)
 いずれにせよ燃料費高騰、人材難で苦しむ物流業界。従来のコスト削減に奔走しては、自滅の道が残るだけ。いま切り替えの時期に来ていることだけは確かだろう。
※1=人材派遣・業務請負の区別=人材派遣は労働者派遣法に基づき、派遣元事業主の雇用する労働者が、派遣先企業のために派遣先の指揮命令を受けて就業すること。派遣受入先が、さらに別の企業へ派遣することは「二重派遣」として禁じられている。一方、業務請負は、発注者との請負契約に基づき、請け負った仕事の完成を目的として業務を行うことをいう。請負の場合、指揮命令系統は請負事業主側になければならず、これが発注者側にある場合、「偽装請負」となる。
※2=三浦専務理事が所属するセル・ホールディングス・グループでは、同グループの事業の1つである物流人材業務において、中長期的な労働力確保と定着化を図るために、人材スタッフの教育、コンプライアンスの徹底した遵守と作業労働状況に連動させた処遇面の反映(ポイント制)を実施。製造業で出されたガイドラインを、物流業界に先駆け、取り入れ、請負事業の雇用管理の改善や適正化に取り組んでいる。
▼人材コンプライアンスのプロであるセル・ホールディングスの
三浦弘人社長は3月18日の<物流改善セミナー>で
人材教育に関する講演を行います。
http://file.e-sohko.com/eigyo/e-sohko/butsuryu-fudosan/seminar/seminar_080318.pdf
※記事提供「月刊ロジスティクスIT」
http://www.logi-it.jp//map.html