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米国物流学会紀行 

 10月2~5日に米国のフィラデルフィアで行われたcouncil of Supply Chain Management Professionals(CSCMP)。米国の最新の物流情報や米国が抱えている課題をリアルタイムに知ることができる。このセミナーに、東運開発(本社・東京)の池田光男社長が参加した。

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 30のセッション(部屋)に分かれて、それぞれでセミナーを開催。池田社長が参加したセッションの中心議題となっていたのが①SCMにおける人材②3PL(サードパーティ・ロジスティクス)、アウトソーシングは役に立っているのか③3PLの次の4PLというものについて――だった。
 ①の人材については、SCM専門家の不足が表面化しているという。従来、米国の物流でも運輸や保管という、物流の一つの機能を、一つの会社が担えばよかった。そして、それぞれの専門家はいた。しかし、SCMとなると、物流だけでなく、生産から販売までも含めた高度な知識が求められるようになった。さらに、生産と販売で求められる物流サービスは異なるため、サービスも多様化している。その全てに対応できるリーダーシップを取れる人材が不足している。
 さらにトラックの運転手でも人材不足は問題になっている。2001年のアメリカ同時多発テロ(9・11テロ)の影響を受け、輸入時のレギュレーション(規制)が厳しくなっている。国境を越える荷物に関して、検査が厳しくなり、国境ではトラックが長蛇の列となっている。その待ち時間が膨大となり、仕事にならず、トラック運転手が儲からなくなっている。
 ②のアウトソーシングについても、日本と同様な問題を抱えていることが分かった。
 物流を完全にアウトソーシングしてしまったために、メーカー企業側が持っていた企業文化を物流に継承できないと懸念している企業もでてきている という。
 物流の効率化として一方的に進められてきた3PLやアウトソーシングが、曲がり角に来ている状況だという。
 また、池田光男社長は「数年前までJIT(ジャスト・イン・タイム)という言葉を必ず聞いていたのに、今回はほとんど聞かない。JIT自体が米国でうまくいっていないのではないか」と語った。
 また、米国の今後の物流動向の中で4PLという考えが生まれてきている。荷主と3PLの間に立ち、最適な3PL会社を選別する会社という位置づけだという。
 これは、現状の3PLというビジネスモデルに、米国の荷主や小売店側が、満足していないためとも考えられる。
 日本の物流業界でも3PLとは?と論議されることも多かった。自社物流、アウトソーシングのメリット、デメリットも語られる。それと同じことが「10年先の物流」と言われていた米国でも、議論されていることは、今後の日本の物流でも、面白いと言えるだろう。
 池田光男社長は、CSCMPの前身であるNational Council of Physical Distribution management(NCPDM)の時代(約35年前)から参加している。当時はアメリカの国内物流が中心議題となっていたが、CSCMPになり、国際物流のテーマが増えてきているという。一方で、倉庫分野の内容は縮小している。「グローバルの要素が加わりSCMが複雑化している。名称が変わっていったのも、物流の姿が変わっていったからだろうが、まだ方向性が定まっていないようにも感じる」(池田光男社長)。昔から米国の物流事情を知っているからこその感想だ。