物流不動産ニュース

物流、物流不動産、倉庫を網羅した
最新ニュース・情報を発信しています。

  • メール会員情報変更
  • メールマガジンバックナンバー
  • ニュースメール配信登録

書面での契約、義務化へ▼荷主・実運送業者間で 適正取引実現目指し 

2013年03月04日

 【輸送経済(http://www.yuso.co.jp)】
 実運送業者と、荷主ら運送業務委託者間の書面契約義務化に向け、国土交通省は検討に入った。運賃や運送・付帯業務などについて事前に細かな約束を確認する仕組みを整え、適正取引の推進と安全確保を目指す。違反行為を強要する荷主などには行政が速やかに勧告を出して社名公表を行えるよう、通達見直しも検討する。 
 書面契約義務化のガイドラインの要点は、(1)参入時規制の強化(2)多層構造の弊害解消(3)適正化事業の充実――といった、トラック業界の安全向上や健全化に必要な課題を検討する21日の作業部会の初会合で提示された。
記載内容は運賃など10項目
 書面化は「契約のうち重要な事項を確認するもの」と国交省。車両を使って輸送する実運送業者に、業務を行う前に最低限の約束を、荷主ら輸送を「頼む側」と書面で確認させることで、適正取引や安全運行につなげる。
 書面に記載するのは、(1)運送委託者と受託者名(2)運送内容(3)運送品の概要(4)運賃・燃料サーチャージ(5)付帯業務内容と料金――など10項目。
 今後トラック協会や荷主団体の意見を聞いた後、4月に開催する次回作業部会で内容を決定するとみられる。「遅くとも夏までには必要な省令や通達を変更する」(加賀至貨物課長)。
荷待ち、付帯料金収受期待
 国交省は書面契約の義務化を通じて、荷待ち時間や付帯作業での料金未収受の問題を解決したい考え。長時間待たされたにもかかわらず留め置き料をもらえなかったり、配送以外の業務で料金が支払われない問題をトラック業界は長年抱えてきた。
 全日本トラック協会が昨年1140社を対象に行った調査では、「荷待ち時間がある、あった」(86.1%)と答えた事業者のうち、62.1%が書面で合意していないと回答。53.8%は適切な料金を収受できていなかった。
 商品陳列や清掃などの付帯作業についても59.8%が「無償で行っている」とし、国交省のこれまでの有識者検討会で委員から早期改善を求める声が上がっていた。
「頼む側」の規制強化 悪質荷主に即勧告も
 また、国交省では荷主ら輸送を「頼む側」が実運送業者に、過労運転や過積載、速度超過の引き金となる「無理な計画」(加賀貨物課長)で業務を指示しないよう「荷主勧告制度」を強化する。
 同制度は輸送を頼む側の指示や「優位な立場」による圧力で事業者が法令違反を犯した場合、行政が荷主や利用運送業者に改善を勧告するもの。だが、従来の制度では勧告を発動する悪質行為の内容が明示されていなかったり、勧告までに時間がかかるといった課題を抱えていた。
通達見直しは今夏までにも
 そのため、国交省は勧告の対象となり得る行為の例を通達で示す。事業者が改善を要請しているのに、恒常的に荷さばき場で荷待ちを発生させるケースなども盛り込む。
 従来の制度では荷主に最初の協力要請を出してから勧告を発動するまでに最長で6年の期間が必要だった。通達見直し後は悪質な行為が見つかれば即座に勧告を行い社名公表できる仕組みに改める。
 加賀貨物課長は「全ト協の調査でも悪質と思える事例はあった。行政が迅速に動ける体制を整えることが重要」とし、今夏にも荷主勧告制度を改正する通達が出される。(小林 孝博)
◎トンボの目 現場に即した議論必要
 「参入時基準の強化」と「多層構造の弊害解消」が議論の柱となる今回の作業部会。まず書面契約の義務化に着手したのは、国土交通省が明言する「できるものから実行する」との姿勢の表れといえる。
 国交省は昨年まで最低車両台数と適正運賃収受の議論を2年以上続けたが、成果は残せずじまい。今回は開始前から「短時間で結果を」との声が上がり、昨年から準備してきた書面契約の義務化から取り組んだ。
 2月21日の作業部会では書面契約の要点を提示したものの、議論の余地も残る。例えば「実効性の担保」。国交省は「セミナーを通じて周知する」というが、これだけで十分か。
 また事前の契約がない突発的な業務があった際、書面契約をどこまで簡素化できるかも十分な検討が必要だ。荷主団体の委員からは実効性担保とともに、円滑性の確保を指摘する声が出た。書面のやり取りをチェックする仕組みも要る。今後の議論ではより“現場の実態に即した”制度が求められる。(小林 孝博)