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【集中連載】アスクル火災を追う(2)シャッター閉鎖障害 

ASKUL Logi PARK首都圏の火災現場では、消防隊員による決死の消火活動が繰り広げられていた。テレビのニュース映像では外部からの放水シーンが連日流れていたが、消防隊員は内部に侵入、端材室に到着した消防隊員は十分な放水量が得られない中、50mmホースを消防車から延長、およそ3分で端材室の火勢を鎮圧した。

しかし、問題はそこからだった。建築基準法で定められている防火区域(1500m2)内に設置された2・3階の防火シャッターに、閉鎖障害が発生したのだ。

同センターでは自動火災報知設備の感知器、中継器など防火装置の配線は、火元の北側が「第1系統」、中央部・南側が「第2系統」に分類されるが、ともに閉鎖障害を起こしていた。

特に激しく燃焼した第1系統では、端材室内の折り畳まれていない多数の段ボールが激しく燃え上がり、上部開口部(2階部分)から高温熱気を伴う火炎が噴出。2階鉄筋コンクリート製柱が激しく熱せられて爆裂。伝送線の一部(伝送線に接続するアナログ感知器を含む)の回線がショートしたために、第1系統全体の機能が喪失した。

1階端材室天井の閉口部(出典・消防庁)

第2系統では、シャッターを起動させるための電流を送る制御線の回線がショート。受信機の損傷を防ぐために設けられた電流ヒューズが溶断してしまい、制御線全体の機能を失ってしまった。

第1系統では、伝送線の一部(伝送線に接続するアナログ感知器を含む)の回線がショートした結果、系統全体の機能が喪失。第2系統では、シャッターを起動させる動力となる制御線の回線がショート、点検時に受信機損傷を防ぐための電流ヒューズが溶断し、制御線全体の機能が喪失したと推定されている。

その対策として、「埼玉県三芳町倉庫火災を踏まえた防火対策及び消防活動のあり方に関する検討会」で論じられた視点は、(1)感知器等の情報を伝送する配線のショートを防止するための措置、(2)回線がショートした場合、影響を最小限に留めるよう、配慮した設計とする――の2点だった。
 
消防法第24条第1項第1号(自動火災報知設備に関する基準の細目)によると、「600ボルト二種ビニル絶縁電線または同等以上の耐熱性を有する電線」「金属管工事、可とう電線管工事、金属ダクト工事又はケーブル工事により設けること」とある。

  閉まらなかった防火シャッター(出典・消防庁)

耐熱電線の基準加熱方法は、JIS A 1304(建築構造部分の耐火試験方法)の標準曲線の2分の1とした曲線に準じて15分間加熱、JIS C 1602の0・75級以上の性能を有するK熱電対及び連続温度記録計を用いて測定・制御を行うと記されていた。
 
電線総合技術センターで実施している耐熱電線の加熱試験では、認定業務委員会が認めた試験機関の検定炉を用い、 JIS A 1304に定める温度曲線の2分の1となる15分間での380℃。

火災初期段階で高温熱気を伴う火炎にさらされた端材室(第1系統)上部開口部の2階付近では、鋼製保護管の中に耐熱電線(2心平型)が敷設されていたことが確認された。各中継器盤からアナログ式感知器までの配線に用いられていたものだという。(続く)

          2心平型の耐熱電線

ロジスティクス・トレンド(株) 水上 健