物流不動産ニュース

物流、物流不動産、倉庫を網羅した
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不精に亘る勿かりしか 

今から数年前。某物流団体を取材した際、担当者が胸を張ってこう言った。「海外の物流には、もう見るべきものはありません」。

その団体では、数年おきに海外視察を行っていた。海外の進んだ物流ノウハウを学ぶのが目的なのだが、日本が海外から学ぶべきことはすでに無いのだという。「ヨーロッパのある視察先で『不達率は数パーセントしかない』と自慢され、逆に驚きました。仕分けや配達業務も、日本より効率的だとは思えないのです」と。

当時の筆者は今よりさらに物流には無知。物流業界は行き着くところまで行き着き、大幅な成長も技術革新も見込めないという担当者の言葉に、「物流は枯れた産業」という認識を持つにいたった。実際、「物流に関しては、もう大きな動きはないと思いますよ」という担当者の言葉に嘘はなかったと思う。すくなくともこの担当者の認識ではそうだったのだ。

ところがである。今や物流は注目の業界といわれている。eコマースや物流施設デベロッパーの動きもあいかわらず活発で、しかもその多くが外資系だ。ドローンや無人運転技術の実用化も海外勢に押され気味だし、倉庫やトラック便のシェアといったビジネスモデルも海外に端緒を求めることができる。あの取材から数年で、いったい何があったのか。海外から学ぶものなど、もはや無いのではなかったのか。

今にして思えば、当時すでに動きはあったのだ。現在大手となっているecサイトがいくつか開設されていたし、アマゾンははやくも日本に物流センターを持っていた。流通形態が変わり本格的な3pl事業が芽生えるとともに、倉庫のニーズは保管型から仕分けや加工を行う通過型へと移りつつあった。そしてこれらを見越し、大規模高機能型物流施設を得意とする外資系デベロッパーも日本に進出しつつあったのである。

端的にいって、効率とか速達性とかいう、既存の物流スキームの上に乗ったファクターにはすでに旨味は無かった。しかし、物流を別の形態に変えていく、ニーズに合わせて再構築していくという分野には、大きな成長の余地があったのだ。筆者も含め、なぜそのことに気づかなかったのか。某物流団体を非難するわけではないが、海外まで行って何を見てきたのだと言われても仕方がない。それとも、新たな潮流は自分たちには関係ないとでも思ったのか。 

結局のところ、ものをいうのは情報収集力と分析力だ。個人レベルでは先を見通す能力を身につけることが最善策だが、そうはいっても自身を簡単に変えられるものではない。筆者は反省の意も込めて、せめて考えることだけは怠けないよう心がけている。物流が儲からないという話題を耳にするたびに、ほんとうにもうやることがないのか、打てる手は全て打ったのかと。少なくとも、手は打ち尽くしたと普段から断言できるような、そんな生き方をしたいものである。怠けたり、面倒くさがったりしなかったか、と振り返りつつ。

結果、また反省点ばかりが浮かんでくるわけではあるが。

 

久保純一 2017.06.05