物流不動産ニュース

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物流が変えた街、街が変えた物流 

新宿駅東口、新宿三丁目と聞くと、新宿のなかでも特に繁華な一帯というイメージが強い。国内でも圧倒的な集客力を誇るエリアだが、この街をより魅力あるものにしようという取り組みが続けられている。エリア内の有志と区がすすめてきたもので、中心となっているのはエリア内の4つの商店会が母体となって設立された協議会だ。

例えばエリア内では、平成25年11月に「新宿駅東口地区駐車場地域ルール」が策定されている。都内では一定以上の規模の建物を建て替えたり増築したりする際、駐車場の設置を義務づけているが、新宿三丁目エリアに立つのは多くが中小規模のテナントビル。これに駐車場を設置してしまうとファサードがまるまる駐車場の出入口になってしまい、集客機能を大きく損なってしまう。この駐車場附置義務は、エリア内における開発や建て替えを阻害する一因とされたこともある。同ルールではこうした現状を是正するため、附置義務台数の緩和とともに、駐車場を敷地外に設けることを認めたのである。

さらにこのルールでは、配送車の荷捌き用駐車場(荷捌きスペース)についても定められている。そのひとつが障害者用駐車場と荷捌きスペースの兼用。もうひとつが、荷捌きスペースの敷地外への設置だ。前述のとおりエリア内を占めるのは中小のテナントビルだが、なかでも飲食テナントを核とするビルが多く、配送車の効率的な荷捌きが課題となっていた。とはいえ限られた敷地を荷捌きのためだけに割くのは得策とは言い難い。そこで認められたのが、障害者用駐車場での荷捌き。もちろん荷捌きの時間と駐車場利用可能時間をわけるなどの条件があるが、食品の配送は特定の時間に集中する傾向にある。兼用は十分可能というわけだ。荷捌きスペースの敷地外への設置にも、配送車から目的地までの搬送などに条件があるが、限られた建物のスペースを有効に活用できるという点でメリットが大きい。

さらに昨年11月には荷捌き集約化の社会実験も実施した。実験はエリア外に集荷場を設けて配送車を集約し、そこからエリア内の配送先に荷物を振り分ける。また駐車場の適正利用を目的に、路上駐車車両の誘導やパーキングメーターの利用時間厳守などの呼びかけも行った。この実験、今年も実施されるのだが、今年はさらに一歩すすんでいる。「SHINJUKU STREET SEAT」と名付けられたベンチを車道に設置し、道路を賑わいの場に変えようという試みも同時に行われるのである。

協議会が目指すのは「歩きたくなる街」。駐車場の兼用、敷地外設置は、建物の効率的な利用だけが目的ではない。駐車場の出入口だらけの街を歩きたいという人も、そこかしこに配送車が停まっている街を散策したいという人もいないだろう。車が減った道路に人が憩う。物流の効率化が街の賑わいづくりに直結する好事例といっていい。

 

久保純一 2017.10.20