物流不動産ニュース

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棚の上のエルフ 

欧米の家には、棚の上のエルフ(Elf on the shelf)とよばれる妖精が棲んでいるという。見た目は小人そのもので、名前の通り棚の上などに隠れながらその家の子供を観察して、いいこかどうかをサンタクロース氏に報告するという役割がある。報告は子供が寝たあと、サンタクロース氏に直接伝えにいく。家の中でもしょっちゅう移動しており、毎日ちがう場所にあらわれるという。いいこでないと判断されれば、残念だがプレゼントはもらえない。で、子供たちは寝る前に、その日あったできごとを棚の上に向かって自己申告したりする。もちろん正直に。

一方日本の企業では、いいこかどうかは妖精ではなく、テクノロジーが判断しつつある。勤務中の実働時間をパソコンの履歴で確認できたり、外回り中の行動をGPSで把握したりといった仕組みはすでに定着しているし、ドローンで社内の見回りをはじめようという動きもある。妖精の目を盗んでサボるという行為は、もはや通用しにくくなっているのである。

当然の流れとして、より的確な判断のためにAIの活用も研究されている。勤怠管理と業務能率を一元化して、業務成績をクラウド上で管理して人事評価につなげたり、最適な配置へ転換させたり、勤務時間の長い従業員に警告をだしたり。採用の際は、有用な人材か否か判断するといった運用も考えられるという。自己申告しなくとも、どこかで見ていて評価を下す。企業におけるエルフともいうべき人事部に代わるシステムだ。

この「現代版・棚の上のエルフ」、言うまでもないが活躍の場を倉庫内にもひろげつつある。ここで重点が置かれているのは業務効率の改善で、棚の配置からピッキングの導線、部署に必要な人数やまでもAIが判断する。研究がすすめば、個々の従業員の作業効率を考慮した最適な人員配置や、どの従業員の能率が上がっているか、落ちているかといった点も評価できるようになるといわれている。そのうえで、AIが指示をだすのである。君はこう動きなさい、と。そしていずれ、倉庫内作業員はAIの指示を完璧にこなせるロボットにとってかわられるのである。

現代版・棚の上のエルフがいいこを判断する基準はただひとつ。効率的か否かだ。そこにはやさしさや思いやり、正直といった美徳が入り込む余地はない。効率を上げるという目的を達成するためには、その方が理にかなっているというのは理解できる。できるのだが、人が働く理由というのは効率の追求だけではない。もっと大事な何かがあるはずだ。いや、その何かを見つけるために働いたっていいのだ。

今日、まだAIはそこまで発達していない。役割を失っていない妖精はまだ、どこかに隠れているはずである。

はたらくみなさん。あなたががんばっている姿、きっと妖精が棚の上から見ていますよ。

 

久保純一 2017.12.20