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駐車場と書いて何と読む? 

国土交通省が、ビルに設置が義務付けられている駐車場の台数や用途について緩和する方針という。2月4日付けの日経新聞が伝えた。

いわゆる附置義務駐車場とは、ビルや商業施設など一定以上の規模を持つ建物に対して設置が義務付けられた駐車場のこと。国交省はこの基準を緩和して駐車場の附置台数を減らしたり、別の場所に集約したりできるようにするという。

附置義務駐車場は建物の規模に応じて台数が変わってくるが、国交省で定めているのはあくまで目安。どの程度の建物にどの程度の台数を確保するかは自治体に権限があり、実は今でもかなり柔軟に運用されている。例えば銀座エリアや渋谷エリア、横浜市、大阪市の一部などではすでに附置義務の緩和を認めているほか、新宿など独自に附置義務緩和に向けて動いているエリアもある。

こうしたエリアでよく耳にするのが、駐車場は集客の妨げになる、という話だ。車社会の地域では信じられないかもしれないが、公共交通の発達したエリアでは、稼働率の低い建物内建物駐車場は巨大なデッドスペースでしかないし、メーンストリートの正面に設けられた駐車場の出入口は景観を損なうとともに建物の集客機能を低下させてしまう。こうしたエリアでは要するに、駐車場が余っているのである。

今回の緩和策では、駐車場の荷捌きスペースへの転用や、防災倉庫の設置なども検討されているという。実現すればビルの物流効率の改善や防災機能の強化などが期待でき、ビルの訴求力向上につながるのはいうまでもない。大きな駐車場を持つことが建物のアドバンテージだった時代は去りつつある。

しかし駐車場のニーズというのはニーズが読みづらく、精緻かつ機敏なオペレーションが必要になる場合が多い。月極め・時間貸しを問わず、一般的にニーズが流動的で、しかも立地条件やカレンダーによる波動がひじょうに大きいのもまた駐車場の一面だ。自動車の登録台数が減り、車に乗る人が減り、公共交通機関が発達してきたから一律で緩和するのではなく、規制した方が効率化できる場合もあり得るだろう。平日は無料でもガラガラなのに休日になると有料でも入庫60分待ち、という駐車場は都市部でも珍しくない。エリアの駐車場ニーズなど、ショッピングモールがひとつできただけで劇的に変わってしまうのだ。

不動産的観点でいえば、今回の緩和が駐車場需給ギャップの是正だけではなく、駐車場が新たな役割を持つことによる建物価値向上への期待の方が大きい気がする。これからの建物内駐車場の価値は、どれだけ多くの役割を果たせるかではかられるのかもしれない。駐車場と書いて何と読むか、その選択肢は確実に拡がっている。

 

久保純一 2018.2.20