物流不動産ニュース

物流、物流不動産、倉庫を網羅した
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裏品川でベンチャー企業のスタートアップを。 

2000年前後、渋谷区神宮前から千駄ヶ谷において、小さなアパレルショップが賑わいを見せた文化が裏原宿だ。周辺の道は狭く、入り組んだ路地にあり、交通の便は悪い。そのためテナント賃料は低く抑えられ、夢と野心を持て余す若者たちを支えてきた。

「裏原」系ファッションの黎明期は、店舗が雑誌の地図に載ることもなく、実際に周辺を歩いてみなければわからなかった。情報は少なく、商品の値段は極めて高価な物が多く、ある意味でレアな要素に包まれていた。


*画像はWikipediaより引用

そして現在、新たな国際都心として国内外から大きく注目されているのが品川、港エリアだ。JR山手線の品川・田町間の品川車両基地に30番目の新駅が2020年に誕生し、13ヘクタールもの大規模な駅前開発も行われる。例えばサッポロビール工場跡地に再開発された「恵比寿ガーデンプレイス」は約8.3ヘクタールと1.5倍になることから規模の大きさを伺い知ることができる。羽田空港に近いため高度制限は160m程度となるが、3棟のマンション、5棟の大型複合ビルが建設される計画だ。親駅誕生に伴う経済効果は1兆4000億円にものぼる見方もある。

新駅近辺だけではない。開発計画は浜松町駅近辺まで拡がり、品川・白金高輪間には地下鉄新駅開発の計画もある。六本木1丁目まで一本で乗り入れ可能なこともあり、インバウンドの外国人にも与える影響は大きい。

また、2027年度には「リニア中央新幹線」開通を控え、2045年に予定される品川・大阪間の全線開通の交流人口は約7000万人。メリットばかりが全面押しされる<可能性を秘めたエリア>であることは間違いない。

こうした日本のゲートウェイと呼ばれる開発エリアの海側で、新たにビジネスを立ち上げるベンチャー企業に注目されているのが「裏品川」だ。港区海岸・竹芝から品川区・東品川までの海側で運河に面したエリアは、動的平衝の流れの中、裏原宿のようなレア感と強い生命の息吹を感じるからだ。

開発エリアと裏品川が決定的に異なるのは倉庫だった建物が多い点だ。かつて高度経済成長期を支えてきた倉庫たちが蘇生しようとしている。

そこでイーソーコは3月13日と4月5日の2日間、裏品川エリアに位置する2か所のビル内覧会を開き、不動産会社を中心に来場した約150名に対し、旧倉庫の魅力を説いた。倉庫としての活用のほか、倉庫から「倉庫併設型オフィス」や「倉庫併設型スタジオ」など、リノベーションを提案。プレゼンで登壇した大谷真也営業次長は、古い倉庫空間を生まれ変わらせるメリットやエンドユーザーとなるベンチャー企業を誘致した。

今回、裏品川で内覧会を催した物件は・・・

●五色橋ビル(東京都港区海岸3-5-13)
8階建てで竣工は1986年。3月13日の内覧会には約70名が集まった。東京都港区海岸3丁目にある同ビルは、倉庫ではなく、電機メーカーの研究開発拠点(R&Dセンター)として使用されてきた。

JR・田町駅より徒歩15分、ゆりかもめ線・芝浦ふ頭駅より徒歩13分に位置。1フロア400坪を超える空間のため、内装レイアウトの自由度は高い。

●品川シーサイドウェアハウス(東京都品川区東品川4-13-34)
地上7階建・地下1階で竣工は1976年。4月5日に開かれた内覧会に約80名が集まった。りんかい線・品川シーサイド駅から徒歩1分に位置する7階建ての元倉庫。1フロア約400坪で内装改修の自由度は高い。


天井高は約4m、元倉庫ならではの一般オフィスビルにないメリットとして、貨物用エレベータ3基が設置。うち1基は屋上の駐車場まで自家用車で行くことができる(2t車まで)。

・・・両ビルの共通点が交通アクセス性の利便性が高い点と、空間の持つ可能性だ。地の利を活かしたオフィス、クリエイティブ性の高さを持つ空間を求めるベンチャー企業に最適だ。

米国ではスタートアップをガレージから操業した世界的企業は多い。Appleは1976年にカリフォルニア州の自宅ガレージから、Googleは1990年代後半に一軒家の賃貸ガレージ。HPは1939年にガレージから創業、Harley-Davidsonは1900年初頭に当時20歳のウィリアム・S・ハーレーが友人の自宅であるエンジン開発に取り組んだ。

またAmazonでは1994年にシアトル郊外にあるジェフ・ベゾスの自宅からスタート。コストを抑え、安価で顧客を満足させることを最大のミッションとし、スタッフの机は古いドアの板を再利用したことは有名な話だ。

そして日本では現在、倉庫による創業が拡がりを見せている。

「無骨な倉庫をリノベーションしていただくことで、クリエイティブな空間を創出できる」(大谷次長)ためだ。

イーソーコでは裏品川を「ニュー倉庫街」と位置付けており、日本の高度経済成長期を支えてきた大空間を、ベンチャーが集うワークプレイスへと移行させようとしている。

 

ロジスティクス・トレンド 水上 健