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働かせ方改革、運ばせ方改革 

先日、とあるオフィスデザイン会社を取材したときのこと。働き方改革で求められるオフィスのあり方がテーマだったのだが、代表の一言が印象に残った。

「いま世間ですすんでいるのは働き方改革ではなくて、働かせ方改革ですからね」

働かせ方改革という言葉自体は耳にしたことがあった。働き方を変えて生産性を上げるといいながら、結果として経営側に都合のいい働き方に変えさせてしまう。そんなネガティブなイメージを持つ言葉だ。オフィスづくりにおいても同様で、トップダウンでは絶対にうまくいかないという。

オフィスを構築する際、同社では必ずプロジェクトチームを組む。チームにはデザイナーや設計士、コーディネーターのほか、オフィスを構築する企業からも必ずスタッフを参加させる。それも総務や経営陣だけではなく、オフィスを使うすべての部署から参加させるのである。そして定期的にミーティングをひらき、アイディアを出しながらゾーニングをすすめていく。働く場を変えるためには、これだけの手間がかかるという。

ではそこでの働き方を変えることについてはどうだろうか。どう働くかを検討する場には当然「働く人」の姿があるはずだが、現実にはなかなかそうはなっていないようだ。働かせ方改革とは、言い得て妙と言っていい。

一方、物流業界では「根本的な働き方改革は来ないかもしれない」といわれている。あるいは今後、労働時間や勤務地など勤務形態の自由度が増し、働き方が変わったように見えるかもしれない。しかしそれで労働生産性が上がり、人手不足解消という働き方改革最大の目的を果たすことができるかというと、疑わしい。

物流とは要するにモノの流れを司る業種だ。というとモノの流れをコントロールしているように聞こえるが、司令塔は別のところにある。何が、いつ、どこで、どれくらい必要とされているか。これを決定するのは物流現場ではなくクライアントであり、市場のニーズであり、経済だ。ネガティブな言い方かも知れないが、物流とは結局、誰かの要請に沿ってモノの流しているに過ぎないのだ。でははたして、そこでの働き方を、そこで働く人の主導で改革できるだろうか? 自分の仕事の量も自分で決められないのに?

だから物流における働き方改革とは、人からロボットへの仕事の移譲だと言われている。しかしそれも運び手が変わるだけであって、物流の仕組み自体は変わらない。誰かの指令に沿ってモノを運ぶだけという構図は、どこまでいっても変わらない。

物流における働き方を変えるのであれば、まずはモノの流れをコントロールする指揮権を物流業者が奪取する、その必要があるのではないだろうか。何を、いつ、どこへ、どれだけ運ぶのか。それを自身で決められるようになってはじめて、働き方を自身で決めることができるようになると思うのだが。どうすればそんな日が来るのか。はたして。

 

久保純一 2018.8.20