物流不動産ニュース

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街のエネルギーやさんの未来予想 

筆者がその小さなエネルギー会社を訪ねるのは、もう何度目かになる。スマートコミュニティづくりを本気で目指し、設立してちょうど1年。電気の地産地消や収益の地元還元などに、これから本格的に取り組むところだという。訪問目的はいつも仕事の打ち合わせなのだが、先日その参考として聞いた「未来の世の中」が興味深かった。

その世の中を簡単にいうと、「情報やエネルギーが接続された社会」だ。今でも通信網やエネルギー網など、じゅうぶんに接続された社会ではないかと思われるかもしれない。IoTなどの普及もすすみ、それまで接続されていなかった家電や製造システム、交通機関などとも相互に情報のやり取りが可能になりつつある。確かに「情報」に限れば接続はかなり進んできている。だが、エネルギーの接続はどうだろうか。

エネルギーの主力といっていい電力網は現在、まったくの一方通行だ。発電所で生まれた電力はいくつかの変電所を経て消費される場(需要家)まで、小分けされながら届けられる。発電の場と消費の場は常に同じであって、電力は発電所から需要家へと送られるのみで逆はない。電力供給の流れが接続網ではなく供給網と呼ばれるのも納得できる。ところがゼロエネルギー建築(ZEBやZEH)が完全に普及した「接続された社会」では、この供給網は全く違うものになる。

「接続された社会」における電力網はネット状で、情報通信網を兼ねている。独立した「発電所」は基本的になく、すべての建物が需要家であると同時に発電所としても機能する。いわゆるバーチャルプラントだ。仮にAビルで需要がひっ迫した場合はまず自家蓄電池の電力を使い、それでも足りなければ隣接するBビルやCビルから融通してもらうことが可能になる。要所要所にターミナルを置く必要はあるが、送電のロスや発電のエネルギーロス、需要に合わせた発電所の待機もほとんどなくなる。現在のエネルギーインフラに比べ、劇的に効率化できるという。しかもこのシステムでは、電気代は基本無料。自分で使う分の電力は自分の家でつくるのだから当たり前ではある。電力網や自家発電システムのメンテナンスコストはかかるが、これも現在の火力発電をメーンとした電力供給システムに比べれば大幅に低減される見込みという。

この「接続された社会」では、消費や物流という概念も大幅な変更を余儀なくされる。3Dプリンタは衣食住ありとあらゆるモノをつくりだし、買い物に出かけるのは特別な場合に限られる。家にいながらにして必要なモノをつくりだせるのだから、原料さえあればいい。その原料も、ドローンが自動で届けてくれる。買い物先で接客にあたるのも、AIを搭載したロボットだ。エネルギーも人件費も無料なら、物流の無料化だって不可能ではない。エネルギーの変化は、すべてが無料の世の中を実現するための重要なファクターかもしれない。

この未来予想、まったくの当てずっぽうではなく、シンギュラリティと合わせるとより現実味が増してくる。特にベーシックインカム導入への道筋に関しては、AIの発達との車輪の両輪になるかもしれない。

 

久保純一 2018.9.20