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ロボット、ビルを行く 

昨今、ビルとロボットに関するニュースリリースをよく目にする。

一口にロボットと言ってもその役割や能力、形態は様々だ。少し前まではAIを応用した不動産投資判断や、建物管理データの分析などを行うコンピューターシステムもロボットと呼ばれていたように思う。昨今増えているのは、ボディを持って自ら動くもの。一般に想像されるような、いわゆる「ロボット」だ。具体的にはビルの清掃や警備、受け付けや案内、さらに館内の自動搬送などにも導入されつつある。

多くの場合、こうしたロボットたちの開発には不動産デベロッパーが深く関わっている。製作などはノウハウを持つ研究機関や企業が行うが、データ収集や実証実験には実際のビルで動かしてみるのが不可欠だ。そもそもロボットだって製品である以上、ユーザーニーズがなければつくられない。要するに、不動産デベロッパーが自社保有ビルや管理を受託しているビルで使用するために開発しているのである。

なぜデベロッパーがロボットを開発するのだろうか。その答えは、おおむね二つに絞られてきた。一つが省人化で、さらなる人手不足が予想されるビル管理業務においてロボットを活用することは、コスト削減の有力な回答のひとつである。

もう一つが、館内の安心・安全のさらなる訴求。例えばAIを搭載した監視システムは、不審な行動を自動でピックアップしてアラームを鳴らすことができる。高精度なカメラや各種のセンサーが搭載されたロボットの監視精度は、すでに人を上回っている。

そして昨今、ここにもう一つの理由が加わりつつあるようだ。都心部でオフィスビルを運営するデベロッパーの多くがベンチャー企業を支援する仕組みをもっているが、こうしたベンチャーと協業するための媒介に、ロボットはうってつけなのである。ITやAIなどベンチャーのもつ技術やアイディアを不動産と組み合わせてビル内の快適性や働き方の改善につなげ、テナントや来館者、来街者に向かって発信する。そしてエリアの魅力をアップさせ、結果として自社の保有物件の価値向上につなげるのだ。

デベロッパーのそんな深謀遠慮とは関係なく、ロボットたちは今日もビルで頑張っている。

 

久保純一 2019.10.5