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フジサンケイビジネスアイ(9)よそ者・変人が物流を改革する 

イーソーコグループ 会長 大谷 巌一

物流業界のレッドオーシャン(競争の激しい既存市場)状態は急激に進んだわけではない。1990年に制定された物流二法の規制緩和を皮切りに、約30年が経過しようとする今も続いている。筆者は10年前から「ゆでガエル」の比喩を用いて警鐘を鳴らしてきた。カエルを熱湯に入れると慌てて逃げるが、水からじわじわと温度を上げたら温度変化に気づかず、茹で上がった末に死んでしまう。

近年は「オーストリッチシンドローム」に突入した。身の危険を感じたダチョウが砂の中に頭だけをうずめ、安全な場所に隠れたつもりになるたとえだ。目の前にある問題や危険を直視せず、何もしないでやりすごそうとする状態が続けば、中小物流会社は衰退し、いずれ消滅する。

国立社会保障・人口問題研究所によると、日本では2011年以降、8年連続で人口減少が続く。30年にはすべての都道府県で人口が減少、45年までに日本の総人口は1億642万人になると予想されている。専門家は20世紀後半から少子高齢化問題を指摘していたものの、有効な対策を講じなかったことが響いている。

サッカーの本田圭佑選手がACミランに移籍した際、「バカ者・よそ者しか世界は変えられない」とインタビューで答えていた。筆者は大いに賛同した。永田町で変人と称されてきた小泉純一郎元首相は「自民党をぶっ壊す」と構造改革を断行し、郵政事業の民営化、道路関係四公団の民営化などを実現した。

日産自動車を大改革したカルロス・ゴーン会長は、よそ者のカテゴリーに入る。内部のしがらみに惑わされることなく、大胆なリストラやコストカットで日産を立て直した。一方で、老舗のカネボウは、しがらみと忖度で繊維事業からの撤退を断行できず、2004年に経営破綻した。

つい先日、千葉県流山市の井崎義治市長と対談する機会を得た。井崎市長は人口減少に歯止めをかけるため、共働き世代の居住を支援する「職住近接」構想を掲げた。行財政改革に踏み込むことができたのは高い志に加え、地域とのしがらみがなかったからだ。現在は「母になるなら流山市」のキャッチフレーズのもと、全国政令都市と同等の年2.5%の人口増を続けている。流山インター周辺では大手の物流不動産デベロッパーが先進施設を開発しており、物流の一大集積地となりつつある。

改革には痛みを伴う。バカかよそ者、変人と称される人の方が実行しやすい。その点、物流不動産は、既存の物流業界や不動産業界からよそ者扱いだ。筆者は減点主義に傾斜した物流業に不動産業を取り入れたバカで、異端児、変人でもある。継承する家柄、のれんなどのしがらみはない。物流改革は天命だ。「今やらずにいつできる」「俺がやらずに誰がやる」と意気込み、物流不動産ビジネスの普及に邁進する。