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当事者間の紳士協定で解決できない時 − 第5回 コントラクトマネジメント(契約)

 多くの企業では契約書の作成にあたっては、法務部の点検や顧問弁護士に相談をすることが多いでしょう。それは、万が一の訴訟事となった際に双方の不利益を防止するためです。特に物流活動は、企業の財貨ともいえる商品製品を扱いますから、事故はそのまま財貨弁済に焦点が移動します。事故原因の過失割合はどうか、事故の損害額はいくらか、経営や営業活動への波及はどのようになるか、など金銭問題で決着を付けることが先に求められます。そして、再発防止がどのように図られるか、またその信頼性はどのようにみなすことができるか、そうでないならば業務契約の継続はどのように考えればよいか、などとシビアな状況が待ち受けています。
 事故発生と同時に管理者と実務者の間では、事実確認が行われます。そして、事故による損害額の査定というか、影響額の計算が行われます。庫内作業でも輸送途上でも、商品製品の破損や紛失は多いものです。お客様への影響を最小限に止めるために、実務者は最大限の努力によって再配達、再納品を行うことでしょう。
 ところが、製品が生産財の場合には納期遅れが、お客様の生産計画に影響が及んだり、再配達しても損害が広がることもあるのです。
 当事者同士の問題から営業レベル、経営レベル、信頼性に関わる問題に格上げが行われると、協議事項が複雑となっていきます。輸送約款や保管業務の標準契約では、弁済は現物および原費用に限定されます。クリーニング店での預かり契約には、衣類の損傷はクリーニング費用の弁済にとどまる、とはっきりと書かれていることに気づく人は少ないでしょう。しかし、契約や弁済範囲を掲示している場合には、読んだ読まない、説明したしなかった以上に掲示したことが優先されます。
 特に輸送約款では、弁済範囲が明示されているので、現物、原費用の弁償以上は義務責任がないとも言えますが、現実的にはそうならないことが多いでしょう。その時に話題に挙がるのは、責任規模を協議するための協定条項です。
 どのような契約書にも、「本契約に記載されない事項は紳士協定による」などという明示文です。これは、双方で協議しながら妥協点を見いだすための安全弁です。
 事故が生じた場合に原因が明らかで在れば、受託責任や委託責任の範囲で責任所在に応じた弁済や補償が行われることに異論はないでしょう。しかし、現物、原費用以上の波及影響や信頼問題に発展した場合には、協議は紛糾するものです。
 たとえば、自動車工業での納品遅れは、製造ラインストップの直接原因となって、生産高の補償や損害請求が起きる場合がよくありました。量販店でも納期遅延は10分ごとに数万円というかなり厳しい条件も購買契約に記載されていることもありました。
 書かれていたり、掲示されていたり、例え口頭であっても事前に交付された約束で在れば、それを守り、義務と見なし、責任を担当することが求められますが、協議の現場でどちらともつかずに紛糾する場合も当然起こりえるでしょう。
 当事者同士で決着がつかない場合には、代理人による交渉つまり、法定弁護士や第三者による表見代理の登場になります。
 交渉はすべて事実関係、時間系列、事実認定によって行われます。事故はどのようにして起きたのか、その原因はどのように推定できるのか、故意か過失か、その程度や認定できる根拠はどのように集めたのか、という刑事テレビドラマのような進め方が必要になります。
 弁護士や代理人は当事者からの事実報告と意見をもとにして、交渉を始めますが、第三者であるということは、そのまま膨大な交渉時間が必要となるわけです。代理人に委ねる場合には、時間と費用が掛かる、そして結果は交渉次第であるから不透明だ、という前提は意外と重要な要素です。
 当事者同士で例え不利な交渉を受け入れて決着しても、代理人を立てるよりは時間と費用が節約できる、ということも容易に想像がつくことでしょう。事故の協議は正義を定めるものではなく、業務の継続を図るためのものですから、有利不利よりは中断や契約解除を最も重視しなくてはなりません。交渉が長引き、業務が停滞するようなことがないように早期の妥結点を見いだすことが、ビジネス契約でのポイントと言えるでしょう。決して正義や真実の究明にすべてのエネルギーを費やすことのないようにしたいものです。ビジネスは継続によって、損得があるものだし、継続こそが失敗のリカバリーが可能であるからです。

(イーソーコ総合研究所・主席コンサルタント 花房 陵)


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