物流不動産ニュース

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契約を更新するビジネスモデル − 第11回 コントラクトマネジメント(契約)

 物流契約が双方平等で権利や義務を明示した文書であれば、契約は双方の合意事項となる訳です。では契約は当事者間だけのものであるか、というと実はもっと幅広く、奥深く考えなければなりません。つまり、双方の企業は広く社会に所属しており、それぞれの得意先としての顧客と目に見えない契約を結んでいると考えなければならないからです。

 企業活動はゴーイング・コンサーンに代表される、安定した継続が使命です。現在の社会がサステナブルという、安全と安心の継続性を重視しているように、物流企業も物流を委託している企業も、今日と同じように明日もまた同じサービスや製品の供給を約束しなくてはなりません。当事者同士の契約があろうとも、なかろうとなのです。
 2社間の契約は、同時に社会やそれぞれの顧客との約束でなければならないのです。双方平等であったとした契約の条件が、実は社会の変化や顧客要請が変わる事によって、ある日から突然に条件が変化している事もある訳です。
 
 契約には期限があります。それは、社会事情の変化や契約開始段階での条件がすべて把握できている、もしくは想定がすべてに及んでいるとは限らないから、当面の許される条件で契約を結ぶ、ということも十分にあり得ます。ですから、契約には「とりあえずの」期限を設けておくという事が、双方に取ってのリスクマネジメントになる訳です。
 さて、そのように定められた条件が更新されるかどうか、契約の更新の段階では改めて条件を見直しておく必要があります。
 代金や料金と言う貨幣価値に基づく料金表は、当時の物価水準や金利動向に依存しています。極端なインフレやデフレ下では、1年間に物価水準は大きく変わります。ましてや契約期限が2年とか5年という中期に及ぶ場合には、契約締結時との貨幣価値の見直しがどうしても必要になります。
 土地や建物の不動産契約では、この点はとても大きく影響しており、近隣相場や地価の動向がとても気になるところです。
 次に物流活動は量に影響を受けますから、前提となっている処理量、在庫量、要員数、配送の回数と距離、いずれにせよ量の変化がどのように変わってきているか、もしくは、どのような計画にあるのかを見直すことが必要です。
 特に昨今のデフレ対応として、販売価格の下落が量の拡大に影響していることは確実ですので、在庫収納能力をどのレベルで見極めているかはポイントとして押さえなければなりません。

 忙しいときに「物流がパンクした」などという例えが、今後も再発しないかどうかという視点で契約条件に新たに付け加えるべきことは多くあります。要員数もマテハン機材もシステム能力も同様でしょう。
 見直しがそのまま受託業務側だけの課題であるとすると、同じ契約を更新する際には追加の設備投資が必要となりますから、いわば義務だけが増えるということにつながります。あくまでも双方平等の視点からの見直しや追加条件の検討作業が必要なのです。
 契約の更新では、このように当事者双方の点検と、それぞれの所属する背景社会や顧客動向までも広く見ながらの検討が重要であることを意図しなければなりません。

(イーソーコ総合研究所・主席コンサルタント 花房 陵)