物流不動産ニュース

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契約でリスクをヘッジする − 第3回 コントラクトマネジメント(契約)

 文書化した契約書がどんな意味を持っているかを考える機会は少ないものです。ところが欧米では、ビジネスはすべて契約を前提にすすめられ、人間関係よりは文書化された条件に従うことになります。中国アジアではさらに逆説的で、契約書は契約書、実際のビジネスは家族同士の評判や意見を元にした、べたべたの人間関係に多くを依存しているとも言われます。
 日本では、口約束も契約と見なされていますが、実際には法廷闘争でも自白の信憑性が問われるように、口頭契約とか諾成契約などという用語はあっても、ビジネスではほとんど役立ちません。
 買った売った、頼んだ、やってくれる、期待と成果は契約で結ばれた信義に基づきます。イギリスでは紳士論が昔からあって、社会正義が法や契約の原点にあるものだから、ビジネス契約が世論に負ける事件も多く起きています。

 さて、物流業務の契約の本質は「双方平等」の建て前から言って、カネを払う側も受け取る側も対等でなければなりません。契約の世界では「力関係」などという曖昧さは排除される物なのです。ですから、契約の目的は双方のリスクマネジメントと呼ばれ、コンプライアンスの最低限度を示すことになります。
 物流活動におけるリスクマネジメントには、事故や盗難、事業停止や能力超過などの様々な想定ができるモノです。

 1 災害、労災、セキュリティトラブル
 2 法令違反(狭義のコンプライアンス)
 3 環境問題(騒音、排水、廃棄物)
 4 業務立ち上がり、ピーク時期の能力不足
 5 精度、品質、能力不足

双方平等の立場から、どちらかが一方的に責任だけを負って対処策を講ずるわけではありませんが、事故対策などの保険費用の負担や能力不足の原因となりがちな事前協議や予定情報の提供など、双方が当然のことと錯覚しているために起きてしまうリスクがことのほか多いことに注意しなくてはなりません。
 たとえば、物流を委託する側が「業者なんだからプロでしょ?」という意図の背景には、最大処理能力の制約を全く考慮しない過剰入荷、出荷要請、在庫拡張など、費用問題は別としても物理的な能力問題がよく起きています。
 1000パレットの収納能力しかない倉庫やセンターに、日々の入荷コンテナが行列を作って入荷そのものができない事態。予約や予告がなくて、ある朝突然にやって来たら?
 フリースペースの不足から、最大1000ケース程度の出荷能力しかないところでの爆発的な出荷要請。いつまでたっても業務が終わらない無間地獄のような、物流作業が続くと金銭決着ではなく、双方から絶縁状が書かれる事態につながります。
 本来は、契約に箇条書きできない事態が起きるときには、事前協議や信義則に従って「双方協議の上で解決策を」という一文が書かれているはずですが、その部分はどうしても読み飛ばされているようです。というより、協議が必要な事態が前もって双方で未確認だったり、申し入れしていなかったり、という「想定外」「淡い期待感」などが問題となるのです。
 つまり、互いに錯覚している事態が生じて、「想定」の物量や指示命令が現場の大混乱を引き起こし、結果的に作業が中断、終了できずに、火を噴くことが良くあるものです。
 決着は、納品先への賠償問題や在庫違算の過失責任、料金の減免や契約の解除次項に当たるかどうか、などの契約書を巡ってのトラブルになるのです。

 物流業務を委託する側、受託する側の相性もあるのでしょうが、5年も継続するビジネスはとても珍しく、移転や解約による業者交代劇は毎年あちこちで聞かれています。できるモノなら相思相愛で生涯を添い遂げる結婚が理想的ですけど、今時は離婚も同じ数だけ生まれているそうですから、ビジネスの取引も同じようなものなのでしょう。

 結婚と同じように情熱と冷静さが、ビジネスにおいても必要なことは言うまでもありませんが、契約条項には上記のリスクマネジメントに相当する項目を精査して、モレや落ち度のないように心がけたいですね。

 能力問題は案外見落としがちなのです。双方狭義の条文には出荷計画、在庫計画、その能力の事前評価という用語を記載して、万全を図りたいものです。

(イーソーコ総合研究所・主席コンサルタント 花房 陵)


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