はじめに、コンプライアンス 詳解 物流不動産関係法令
最近の規制緩和は新たな法令登場と交代に行われているようです。
かつての不動産バブルでは、短期売買を禁じたり、売却利益課税が強化されたりしました。
酒税に至ってはメーカー努力による新商品ビールが登場するたびに、アルコール税が新設されるなど、ビジネスが規制のスキマを埋めようとすると、新たな規制が登場するといういたちごっこが続いているようです。
それなのに今年の入社式では、ずべての経営者が新人に向かって『当社の姿勢はコンプライアンス』と宣言しています。ビジネスで法律を守るのは最低限のルールであるし、さらにどんどんルールが追加されていく以上、「何を、どこまで守るのか?」という素朴な疑問も湧いてきます。私たちの知らない新しい法律がどんどん生まれてくる、いわば押し寄せる法規制に場当たり的な対応では、いずれモレや忘れが生じるに違いありません。
また専門家として頼りにしたい弁護士や学会も、ビジネス実務家としては専門バカと言いたくなる様な解釈と講義に終わっていて、適切な解説やアドバイスを求めることが難しいのではないでしょうか。
そもそも法律家は法の解釈と訴訟に備えた交渉人で、訴訟が有罪と無罪に紙一重の差で争うことから、絶対的な無罪=コンプライアンスというのも現実的ではないのかもしれません。
コンプライアンスを宣言することは、実は事件の予防であり、再発防止を確実にするための取り組みでなければなりません。人間の欲望に押さえが効かないように、法を犯したいとう動機は、倫理観の欠如や無知、無謀の為せる技ではないからです。事故や事件の原因を究明して対策を打っても、別の犯人が類似の事故と事件を起こすのもいたちごっこで再発防止に役立っていません。詐欺事件や契約違反による搾取が横行するのも、日本人の勧善懲悪の価値観が薄れたのではなく、ある人にとっては悪魔の呼び声が聞こえているからです。
ビジネスにおいて法規制の知識を正しく最新のものにすることは当然として、私たちはコンプライアンスがもつ予防、再発防止策の具体案を知ることから始めたいと思います。
事件や事故はなぜ再発するのでしょう。犯人や当事者を断罪することで再発は予防できるのでしょうか。まったく類似の事故やミス、事件が再発している現実を見る限り、実際には不可能です。犯人を特定したり、その動機を分析したとしても再発できないなら、どうすればよいのでしょう。(続く)
イーソーコ総合研究所・主席コンサルタント・花房陵