ソニーとパイオニアが不調著しく、業界の雄が消えようとしています。
絵の出るレコード、トリニトロンの発明が世界を席巻したのにその後の展開
では、アジア勢に追いつかれ、低価格の普及戦略で失敗しました。ＡＶ業界
は、大人の趣味趣向で高機能製品を毎年投入することが宿命でしたが、所詮
は男のマーケットなので、規模も膨らむことなく家庭用品へと向かいました。

すると業界は、時代とともに顧客層が変わってくることに気づかねばならな
い、という当然の条件を失うと失墜するしかないのです。
　今、音楽や映像はレコード、映画館ではなくスマホのアプリで済む時代に
変わりました。機器製造のメーカーには辛い状況ですが、製品開発の技術は
スマホのアプリ製造にも応用が効くはずですね。
音響工学、画像解析や画像表現の計算式は、様々なアプリで個人技術者が頑
張っているように見えていますが、本来はハードメーカーの技術者にはかな
わないはず。

モノを作ることから、サービスを売る転換に乗り遅れているのではないでし
ょうか。スマホのアプリは所詮ベンチャー企業のスモールマーケットだと思
い込めば、数百億人の個人消費者からそっぽを向かれるし、長年築き上げて
きたせっかくのブランドが消えてしまいます。

ＡＶ業界は機器製造の周辺技術で様々なソフト開発を成功させてきました。
ＤＶＤプレイヤーには当然のようにリモコンがついていますが、このソフト
や技術は独特のものです。
家電全体をコントロールすることも出来るはずだし、スマホのアプリに切り
替えることも可能ですが、まだリモコンアプリは数少なくてヒットしていま
せん。

　製造業の強みはリバースエンジニアリアングにあり、完成した製品をとこ
とん分解することがお得意のはずです。まだ世の中に登場してこない、誰も
が欲しがる製品を生み出すことは十分に可能だけれど、それをとどめてい
るのは自分たちが
持っているこだわりやしきたりではないでしょうか。
　変わるＡＶ業界の行く末は、生活のデジタル化であり、集中コントロール
や環境指標を読み込んだ自動設定のアプリ開発にあるのではないでしょうか。
　防犯、セキュリティ、照明、空調、音響、室内センサー、遠隔コントロ
ール、自動分析と自動スイッチ、まだまだ便利で快適な生活のためのオート
パイロットの余地は十分にあるのです。
　様々なスマホのアプリは、優れたベンチャー達によって開発されています。
それらを統合、現物化、具体化、ハード化する商品開発に向かって欲しい
と思うのです。
私たちの生活は、依然として不便極まりなく、大きすぎて、小さすぎて、
スイッチが多すぎて、調整が不便なのです。
（花房　陵　イーソーコ総合研究所主席コンサルタント）