物流不動産ニュース

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変わる食品業界 その2 − 第11回 大きく変わる業種・産業界

 拡大するフードサービスの経営課題は、デフレ経済で固定化してしまった顧客単価の回復と店舗運営コストの低減にあります。居酒屋などで均一料金の チェーン店が流行ると、右へ習えの風潮が類似のチェーン店をリードします。安さは食材や調理法に左右されるのですが、特に調理法を支えているセントラル キッチン製造や完成品、半製品の配送という物流が店舗を支えている現実があります。
 また、物流企業も食材を扱うために冷蔵、冷凍設備と調理センターを併設する必要が有るために、フードサービスと物流企業のパートナーシップは強く、系列化する傾向にあります。

 圧倒的な店舗運営のローコスト化を実現しているチェーン店に、イタリアンのサイゼリアがあります。豊富なメニューを提案しながら、食材やソース、僅かな加工を多能工さながら、店長自らでも調理できるように徹底的に標準化を図った調理システムで公開企業になっています。

 かたや世界企業のマクドナルドチェーン展開でも、物流の貢献が話題に上がったことがあります。店舗ストック在庫を限りなく低減して、店舗スペースを確保したとか。
 大型店舗での調理スペースや食材在庫のためのバックヤードがどれほど、客単価や店舗運営コストに影響しているのかを詳しく検証している様子はないので、果たしてこのような多頻度高速配送が効果的だったとは言えないでしょう。
 事実、日本マクドナルでの財務情報を分析してみると、際立つのは店舗不動産の資産勘定です。チェーン売上に対して、不動産試算ウェイトが大きいことが目 を惹きますし、マクドナルドの収益構造が、店舗粗利ではなく、店舗物件のフランチャイジーへの賃貸収入であることに気づきます。

 つまり、フードサービスといえども事業の安定化、収益構造が不動産にシフトすることの成功事例が登場していることに注目する必要があります。フー ドサービスの原点は、マクドナルドやコンビニエンスストアが示したフランチャイズの原則。クリーン、スマイル、オペレーションだったことを振り返ると、顧 客満足のためにどんどん提供メニューの低価格が進むに連れて、素早く事業構造を転換したマクドナルドの手法に関心が集まらなくては不思議です。

 通常の小売店舗運営では、店舗経費は日商いの2日分とか3日分と言われています。つまり、家賃は月商の2〜3日分で収まるように運営をしなければならない、という原則があるのです。
 メニューの低価格が進めば粗利益も減り、そのために客数や客単価を上げる工夫が運営やマーケティング、新メニューの投入に欠かせないのですが、努力にも限界点があるのです。
 そこで、チェーン展開を仕掛けるフランチャィザーの志向は店舗そのものへ向かいます。店舗用地獲得、内装改造、運用コストの低減化をはかり、最終的にも経営資源に不動産そのものを加えてゆく戦略が効果的だと言えるのです。

 ネットスーパー、日本郵便の全国名産カタログなど、食材の通販ビジネスが好調に見えてはいますが、この流れも店舗運営コストとの比較で生まれた時代の寵児なのです。
 顧客購買単価が上がらなければ、必然的に店舗コストを削減せねばならず、無店舗化や不動産の集中管理へ向かっているのです。

 今後、食品業界が外食、中食(お弁当や調理済み)、内食(家庭調理)、給食などに分離展開を一層進める中で、中食への期待感が高まります。それ は、セントラル調理品の物流配達で賄えるからです。しかし、これとても出前競争と同様で、メニューや価格競争を続ける限り、勝利者不在の競争激化が見えて います。

 今までのフランチャイズシステムが、フードサービスを展開する際に店舗オーナーを対象としてきたビジネス構造は必ず転換点を迎えることになります。
 客単価、回転率、話題のメニューには限度があり、低単価による低粗利では事業の継続が難しいからです。ザー(フランチャイズ本部)が仕掛けたビジネスモ デルは、ジーフランチャイズ契約店)の自己責任による店舗取得から、店舗までも提供を受ける不動産事業に傾向が強まるだろうと思われます。
 ラーメン、居酒屋、レストラン、ファストフードという食材による棲み分けは、店舗用地に固定化によって、全てのジャンルを扱うザーの登場というか、ザーの統合に向かうでしょう。

 経営の資源は、ヒト・モノ・カネ・情報に加えて、低金利だからこその不動産が有効な手段となっていることは、フードサービスの成功事例に見て取れるのです。

(花房陵 イーソーコ総合研究所主席コンサルタント)